トリコ

□さあ、いざ行かん眠らない街へ!
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「…頭痛ぇ………」

頭に鈍い痛みと眠気を感じながら蒼鬼はもう一度惰眠を貪ろうと柔らかくフカフカなベッドの上でごろりと寝返りをうった。
うった…が…何か…違う。
あれ…?自分の部屋は確か万年床のペタンコ冷え冷えかっちかちの布団じゃなかったっけ。
それに部屋の匂いだって古き良き畳の独特な香りとカップラーメンの匂いが混ざったなんとも言えない感じであったのに、こんなふわりと香るシトラスのお洒落な感じでは断じて無い。

「!!?」

一瞬にして脳が覚醒し、驚きと共に最高級掛け布団を弾く勢いで起きると違和感ではない違和感に気付いた。

「…うぇい………?」

素っ裸なのだ。
しかもそれだけではない。
キングサイズのベッドには天使の寝顔で今だ眠っているセドルと、突き落としたであろうボギーは床で寝ており、スタージュンやホールメンバーを除いて全員がこの広い見慣れない…恐らく高級ホテルの一室に押し込まれるような形で眠っていた。
ただ一人、乱れてはいるが全身着ているユーだけがこの部屋の中で異質なように見える不思議。

『おーおーおー…』

部屋を見回してみれば、かなりの数の酒瓶と脱ぎ捨てた服と下着が散乱している。

『乱交パーリー後ってこんな感じなんだろうなぁ…』

と、結構冷静にそんな事を考えてみる蒼鬼。
それにしても改めてこう己の体を見てみると、その貧相さに涙が出てくる。
とりあえず着替えようかとベッドから降りようとした時。

「…」

ふと何かを思ったのか蒼鬼は布団をぺろりとめくってセドルの方を見た後。
口を蛇行したように歪め、嬉しそうに赤面した後合掌した。

「いやぁ…眼福っすわぁ…」

ニヤニヤと朝から良いものが見れた蒼鬼はご機嫌よろしく自分の服を拾い上げ、シャワールームに向かった。
熱いシャワーを浴びて酒気を抜いている間に音を聴いて起きた誰かが驚きからの絶叫を上げ、それが連鎖するように次々と知っている声が微かに届く。
しかしその声は無視して頭を洗おうとシャンプーを取ろうとした右手が油性マジックの線が数本引かれている事に気付く。
そして思い出した。

「そういやぁジェリーのチンコと金玉に落書きしたっけ。確か極小バナナとか…」

そう呟くが早いが、部屋から割れんばかりの笑い声が響き渡ってきたので、ああ…チンコ握ったのか…と思った蒼鬼はシャンプーを取る前に石鹸で念入りに手を洗った。

ラスベガスは現在、12月31日の午後1時である。
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