さようならと……(長編)
□秘密
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しばらくと間、広間に沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは総司だった。
「こうなったら………薬でもなんでも使ってもらうしかないですね」
その言葉に総司、と永倉さんが鋭く制する。
「滅多な事を言うもんじゃねぇ、幹部が『新撰組』入りしてどうすんだよ」
その言葉に千鶴が聞こうとするのを、土方は手で制した。
「それは俺たちが聞いちゃいけねぇことじゃねぇんですかィ?」
土方の代わりに総悟が新選組を牽制した。
その事に新選組のメンバーは、表情を少し動かした。
「あの……私失礼します!」
それだけ言うと、千鶴は駆け出した。
「待つアル!」
そう言いながら、千鶴を追いかける神楽を横目に、土方は溜め息をついた。
「てめぇらが隠してる秘密になんざ興味ねぇ…だが、アイツのことも少しは考えてやってくれねぇか?」
「千鶴……」
千鶴は与えられた部屋の隅でうずくまっていた。
「皆さんと少しは打ち解けられたと思ったんだけど……間違いだったんだね」
振り向いた千鶴の顔に、涙が一筋流れた。
「結局、あの夜から何も変わってはいない」
ぎゅっと拳を握りしめた千鶴に、神楽は千鶴を抱きしめた。
「大丈夫ネ、何があっても千鶴のことは助けるアル」
千鶴が顔をあげると、笑顔に満ちた神楽の顔があった。
「ちょっとずつあの馬鹿どもに打ち解ければいいネ!」