桜歌(長編)完結

□三日月と桜
1ページ/3ページ





桜が枯れる





そのときまで……






昔の夢を見た。
まだ京の都に屯所があったころ。
あのとき、彼は咲きゆく桜を眺めていつも呟いていた。
『桜ははかねぇな』
と。
確かにそうだ。
桜は冬の間、養分を溜め込んで春に花咲かす。
そして、1ヶ月も経たないうちに散ってしまう。
儚い花だ。
彼が言ったように。
そんな桜はまるで彼らみたいだ。
一時期は平和とは言えないが、幸せだった。
だがそれは一時の華だ。
彼はその一時の夢のために命を尽くした。




思い出される夢は楽しい思い出ばかりではない。




   戊辰戦争





やはりその記憶もあるのだ。
たくさんの仲間達を失う悲しみ。
味わう心の痛み。
彼のために命をかけた山崎君。
千鶴を助ける為に命を尽くした源さん。
意見が割れて脱隊した左之さんと永倉さん。
そう言えば彼らはどんな最期を迎えたのだろうか。
会津に残った斎藤さん。
仙台にて命を燃やし尽くした山南さんに平助君。
そして一番彼にとって辛いことになった近藤さんの投降。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ