頂きもの

□星ノ唄ウ夜
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ジュビアは一人、ギルドから寮までの道を歩いていた。
外は、もう夜。
明日は仕事があるため、ギルドに居る仲間と別れて先に寮に帰っていた。

ギルドのある森からマグノリアの街までの一本道をゆっくり歩いていく。
道に街灯は無く、真っ暗な闇が目の前に広がっている。
今夜は、夜空の主である輝く月は姿を見せず、
その代わりに星々がその夜空を埋めつくさんばかりに瞬いている。
外気が澄んでいるせいか、はたまた月の明かりが無いせいか、
普段よりも、数倍はその存在を増している星々は、
ジュビアに向かっていにしえの唄を唄っているようだった。

そんな星達の大合唱を聞くかのように、
ジュビアも夜空を見上げながら、ゆっくり歩みを進めていた。


「やぁ、ジュビア♪」
不意に自分の名前を呼ばれ、はっとして後ろを振り向くと、
ジュビアはその声の主の姿を見つけ、にっこり微笑んだ。

「ロキ♪
こんばんは♪ルーシィに呼ばれたんですか?こんな夜から大変ですね・・・」
でも、確かルーシィはギルドに居たような・・・と独り言を言うジュビアに
「自分の魔力で来たんだ♪もうすぐギルドでパーティがあるだろ?
その前に女の子達とデートの約束をしておかないと♪」
一人2時間ずつじゃないと、間に合わないかも・・・と
ロキは嬉しそうに話している。

「・・・2時間ずつ?いったい何人の方と会うつもりなんですか?」
ジュビアのその訝しげな問いかけに、人数を正確に言おうとしたロキは
一つ咳払いをして、あいまいな答えを返す。
「うーん、7,8人・・・いや4,5人かな?
いや、もっと少ないかも・・・うん、少なかったよ♪」
明らかに疑いの眼差しを向けるジュビアに、
ロキはタジタジになりながら言葉を続ける。
「あっ、でもギルドのパーティは絶対に出席するから安心してね♪」
そう言うと、ジュビアにパチンとウィンクをした。

楽しそうにジュビアの側で話を続けるロキに、
あまり、無理をしないでくださいね・・・
そう言って、ジュビアはロキの瞳を覗き込む。
ジュビアの漆黒の海のような瞳がロキの深翠色の瞳を包み込むように見つめる。
ジュビアには、その深翠色の瞳に一筋、星が流れた気がして、余計に心配になった。

「・・・ありがと、ジュビア。」
ロキはそう言うと、そのままジュビアに顔を近づける。

と、ロキの背後からガキッとロキの腰を蹴る鈍い音がして、
「どさくさに紛れて何してんだ、てめぇは!」

振り返ると、漆黒の髪をなびかせ、グレイがそこに立っていた。

「グレイ様?」
「・・・痛いよ〜、グレイ。暴力反対!」
今度は、深翠色の瞳にうるうると涙を溜めて、
少しおちゃらけたようにロキが腰を押さえる。
「自業自得だ、馬鹿!」
ヒドイなぁ、でも顔はやめてよね。折角の美貌が台無しになっちゃうよ♪
じゃぁ、今度は顔にする・・・
えっ!!?

完全にジュビアを置いてけぼりにした状態で、
ロキとグレイは漫才のような掛け合いを始めていた。
そんな二人の間に割って入ろうともせず、
ジュビアはニコニコしながらそんな二人を見つめている。


暫くして、はたっとグレイは我に返った。
側には、自分とロキの馬鹿な言い合いを
笑いながら見守るジュビアが居た。

「っとに、お前と居ると馬鹿がうつるんだよ!」
と、ロキに捨て台詞を吐くと、グレイはジュビアに向き合った。

「よく、ロキが来てるって解りましたね?
まさか、二人はそういう関係・・・」
ニコニコしていたジュビアが、
ハッと何かに気付いたように顔を曇らせ、疑いの目を向ける。

「・・・どういう関係だ、こら!変な想像をするな!
それに、オレが用があるのはロキじゃなくて、お前だ。」
グレイはそう言うと、その手に持っていたジュビアの帽子を差し出す。

「? あれ?」
目の前にある自分の帽子を見て、
ジュビアは、自分の頭に両手を乗せ、その頭にあるであろう帽子を探す。

「ギルドに落ちてたんだ。
帰りがけ、はしゃいでるハッピーとぶつかったろ?」
グレイはそう言うと、ジュビアの頭に帽子を乗せた。

「・・・すみません、グレイ様。
ジュビア、全く気付きませんでした。」
帽子を持って、自分を追いかけてきてくれたのだろうと思うと
ジュビアは、グレイに対して申し訳なさでいっぱいだった。

「んな顔すんな。オレが勝手に持ってきたんだから。」
グレイは、そう言うとジュビアの顔を覗きこむ。

「そうそう、明日、仕事が終わってからでも渡せるのに、
グレイはわざわざ、ジュビアを追いかけてきたんだよねぇ?♪」
ロキはとても楽しそうにグレイをチラリと見ると、にこっと笑いかける。

・・・何が言いたい?とグレイがロキに凄んでみせる。
そんなグレイを見たロキは、キャーと乙女のような声を上げ、
ジュビアの後ろに隠れてみせた。

「今日は随分はしゃいでるな、ロキ。
なんか、あったのか?」
ふと、グレイは真面目な顔つきをしてロキを見据える。
ジュビアも自分の後ろに隠れるロキを心配そうに振り向く。

二人のそんな視線を受けて、ロキは苦笑いを浮かべると
「やだなぁ、二人とも。心配性なんだから♪
何にも無いよ?久し振りにこっちに来て、嬉しいだけさ♪」
そう言って、いつものように、優しくふわりと笑った。

グレイとジュビアはお互い目を合わせると、
「じゃあ、ジュビア。ここで良いな?」
「はい、グレイ様♪帽子、有難うございました。」
そう、息の合った会話をすると、グレイはロキを羽交い絞めにして
「これから、ギルド行くぞ!」
「え〜〜、僕は女の子達とデェトの約束を・・・」
「五月蝿い!さっさと歩け。」
そんな会話をしながら、ギルドへ戻っていく。

“落ち込んでいる時は、ギルドの、仲間の中に居るのが一番です”

ジュビアは、そう思いながら二人の背中を見送り、自分は寮への道を歩いていく。


数メートル歩いた位で、不意にグレイはその足を止めると、
「ロキ、ちょっと待ってろ!」
そう言って、ジュビアのところへ走っていく。
グレイがジュビアに話しかけ、
ジュビアは何やら嬉しそうにこくこくと頷いている。
最後に、
「大丈夫ですよ、グレイ様。それより、ロキをお願いしますね。」
おやすみなさい・・・とジュビアの優しい声が聞こえて、
グレイは、ロキのところへ戻ってきた。
ロキのにやけた顔を見て、グレイは一気に不機嫌になる。
「・・・何か言いたげだな?」
「僕が察するに、今のジュビアとの会話、
寮まで送ってやれなくて、ごめんな。
今日は寒いから風邪引かないようにしろよ。
明日の仕事、頑張れな。
みたいな事を言ってたんじゃないかと思ってぇ♪」

「・・・どうやら、2,3発殴られてぇみたいだな。」
グレイはそう言うと、指をポキポキ鳴らしてロキを睨んだ。

「だから、暴力反対だってば♪
今日はエンドレスでグレイとジュビアの事、聞くからね♪」
そう言ってにこやかに笑うロキに、
「それはこっちの台詞だ。徹夜でお前の話を聞いてやる。」
だから、ちゃんと話せよ・・・

グレイの静かな、優しい言葉を聞きながら
ロキは夜空を見上げる。

満天と呼ぶに相応しい今宵。
星々の唄をその耳に聞きながら、
ロキの深翠色の瞳は何処までも澄んでいった。






グレイとジュビアにロキが絡むと、すごく味が出るんですよねぇ〜。なんででしょ?

これを初めて読んだのはお布団の中で、横で寝ている子供を起こさないよう、静か〜に大喜びしておりました。

こんな私ですが、仲良くしてくださいねm(__)m

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