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□AV鑑賞中につき
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新曲のデモテープを持って藍くんの住む寮の部屋にいつも通りにいくと…こんな張り紙があった。


【AV鑑賞中につき七海春歌の入室を禁ず!BY:藍、翔!】


うーん、この殴り書きは…翔くんの字かな?美風先輩は教科書みたいな字だし…
って…えええ、えーぶい!?!?


AVって…男性と女性が…その…シてるエッチなビデオ…ですよね…?
それを藍くんと翔くんが見ている…!?やっぱりロボとはいえ男の子だし、藍くんもそういうの興味あるのかな?
『なるほど…興味ある』とか言っている藍くんの姿が容易に想像できる自分が嫌だ…。
それに付き合いだしてしばらく経つけどキスより先にはまだ進んでいない。
まさか…私じゃ先にすら進むに値しないとか…!?だからエッチなビデオで欲望を満たしているの?

すると部屋の中から、


「おわっ…エグいっ」
「へぇ、知識はあったつもりだけど…映像で見ると迫力があるね」


なんて声が聞こえてきた。
えぐい!?迫力!?ど、どんな物凄いエッチなビデオなの、二人とも!
私は無意識のうちにドアに耳をくっつけていた。


「というか、これを一人で見れないショウって男らしくないよね」
「う、うるせーな!那月は見たがらないんだから仕方ないだろ」
「だからってどうしてボクを巻き込むの。ショウと違って暇じゃないんだけど」
「って言う割には釘付けじゃねぇかよ」
「まぁ…こういうの見たことないから興味はあるよ。勉強になる」

…エッチでいかがわしいビデオは翔くんが持ってきて、藍くんはそれに巻き込まれたって解釈で間違いない、よね。
でも…やっぱり興味あって…私じゃ物足りないんだ。
私はビデオに出ている女性みたいに特別スタイルがいいわけじゃない。地味な私じゃ藍くんが満足するはずなんてないよね。
なんか悲しくなってきた…今日は具合が悪いことにして家に帰ろう。
と踵を返した瞬間、ガチャリと扉が開いた。


「おわっ、…って七海!?いつからいたんだ?」


出てきたのは翔くんだった。


「…ハルカ?来ていたなら入ってくれば良かったのに」


翔くんの声を聴いて私がいることを知ったのか藍くんも出てきた。


「こんな張り紙がされていたら入れませんし…それに、え、エッチなビデオ…すみません、お邪魔しました」
「…張り紙?エッチなビデオ?一体なんの事?」
「うげ…」

藍くんはきょとんとした顔でいるけど、私は騙されません!
私はドアに張られていた紙を取り藍くんに見せた。


「【AV鑑賞中につき七海春歌の入室を禁ず!BY:藍、翔!】…なにこれ」


紙に目を通した藍くんは、忍び足でその場を去ろうとしていた翔くんの後ろ首を掴んだ。


「どこへ行くの、ショウ」
「いやっ!それはその、だなっ!」


藍くんに掴まれた翔くんはバタバタともがいていた。


「AV鑑賞…まぁ間違ってはいないか」
「や、やっぱりエッチなビデオを見ていたんですか…!」


何でもないような顔で認める藍くん。藍くんは何でもなくても私はとても悲しいのに。段々視界が滲んでくる。


「いや!そうじゃねぇんだ!」


私が涙目になっていることに気付いた翔くんは慌てて否定してきた。


「何が違うんです…っ」
「AVはAVでも、【アニマルビデオ】の事なんだっ」
「…アニ…マル…?」
「そう。ライオンがどうやって捕食しているのかをショウが見たがっていたんだ。でもナツキが付き合ってくれないらしくてボクのところに来た。そして、グロテスクだから君がいないところで見たかったらしい」


藍くんはそう言いながら今にも涙が零れ落ちそうな私の目元をそっと撫でる。


「あ〜、その、…書き方が悪かった…よな…ごめん」
「本当だよ。ハルカを泣かせた罪は重い。明日のレッスン、覚悟しておいて。ボクはこれからハルカを慰めなきゃいけないんだからさっさとコレ、持って帰ってよね」
「……分かったよ」


藍くんが翔くんに手渡したのは、確かに動物の写真がパッケージのアニマルDVDだった。
…あんな張り紙の書き方されたら私じゃなくても勘違いするよね。


「とりあえず入って」


藍くんは私に部屋に入るように肩を抱いて促した。




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