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□きすまーく
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「あのさぁ…」


事務所で打ち合わせの最中、私の向かいに座る藍くんは突然ため息をついた。

「はい?」
「それ、何とかならないの」
「…?何がですか?」


そう言う藍くんの視線はやや下を向いている。
いったい何を見ているんだろう?


「君のそれは無自覚なの?だとしたらボクは君という人物を見誤っていたことになる」
「え?」


さっきから藍くんの言っていることがよく理解できない私は藍くんのほうに身を乗り出すと、藍くんはプイと視線をそらしてしまった。


「…ボクは君にとって何?」
「とっても大事なパートナーです!」
「……それだけ?」
「いえ!あと、私の大好きで大切な人です!」
「ボクはヒトじゃないけどね。で、異性として認識しているの?」
「もちろん、していますよ?というかどうしたんです?」


視線をそらしていた藍くんは私の方を向くと、私に指差した。


「なら、そのだらしない胸元はなに?それでボクや他の男を誘っているつもり?」


藍くんが指差した方へ私は視線を落とすと…そこは私の胸元で。


「……あっ!!」


今日の私の服装は胸元がやや深めに開いたセーター。かがむか、自分より背の高い男性と対峙するときは胸元が見えてしまう。
打ち合わせ中向かい合わせに座っていたため、やや前に身を乗り出して話をしていた。
とすると…私の胸元は藍くんに見えていたわけでして…


「どうなの?」
「す、すみませ…」
「謝るってことはボクのことは誘っていない、と解釈するけど」
「い、いえ!そ…ういうわけじゃなくてですねっ!」
「ふぅん…じゃぁ誘っているんだ?」


気が付いたら藍くんが私の隣に移動している!一体いつの間に!?
誘うとかそういうつもりでこの服着ているわけじゃなくて〜〜!


「あ、あのぅ…」
「君に誘われるのも悪くないかな…嫌いじゃないよ、こういうのも。ねぇ?ハルカ…」
「えぇええっ」


そ、そんなに甘い声で名前を呼ばないで下さい!
しかも腰は抱き寄せられているし、顔がとても近い…っ
キ、キスされるのかな…


「まぁ、ボクの前でならそういう服でもいいけど…他の男の前で二度と着たくなくなるようにしてあげる」


突如藍くんの吐息を私は首筋に感じると、藍くんはそこに唇を落としてきて!!!


「ひゃ…ぁっ」


素っ頓狂な声を上げた私に藍くんは少しだけ唇を浮かせて笑った。


「もう少し色気のある声出せないわけ?ムードも何もないんだけど」
「…っ、首元で、しゃべらないで…くださ」
「どうして?」
「息か、かかって…くすぐったいから…」
「くすぐったい、か。まぁ今はそれで許してあげる」


再び藍くんは私の首筋から肩口、鎖骨と舌でなぞり胸元に顔を埋めて何か所か強く吸いあげる。


「や…、な、に…っ」


そして吸い上げた個所を舌先で舐め、胸元から顔を上げた藍くんは、自分の唇をペロリと舐めた。


「これくらいでいいかな」
「……」


私はとてもじゃないけど恥ずかしくて、藍くんの顔をまともに見られずに下を向いた。
けれど藍くんに顎をつかまれて顔を無理矢理あげさせられてしまって。
顔を上げた先にいる藍くんは小悪魔のような微笑みを浮かべていた。


「君の白い肌に赤い花を咲かせてあげたから」


そう言われて強く吸われた箇所に視線をやると赤くうっ血した…キスマークがいくつかあった。


「これ…っ!」
「君が誰のものかっていうマーキング」
「でも、私これからまだST☆RISHの打ち合わせが…!」


このまま打ち合わせに行けば見えて目立ってしまう!


「ボクはその打ち合わせには関係ないから別に困らないよ」


藍くんが困らなくても私は困る…というか、恥ずかしすぎる…。


「困るのは君だけだね」
「ぅぅ…」
「この手の服をボク以外の前で着てきたら何度だってしてあげる」
「もう…着ません」
「そう…残念。でも、物わかりがいいハルカは好きだよ」


すると突然フワリ、と首に何かを巻かれた。


「これ…」
「ボクのストール。そしてショウやナツキはこれがボクのストールだって知っている。きっと彼らは不振がるだろうね」
「どうして藍くんのストールをつけていたら不振がるんですか?」
「はぁ…本当に君は…。じゃぁ聞くけど、トモチカが仮にボクのストールを巻いていたらハルカはどうする?」
「えっと、トモちゃんに聞きます!」
「それと同じ。ショウもナツキもバカ正直だから聞いてくると思うよ」
「あっ!」
「ま、そこはうまくやりなよ」
「……はぃ…」


そういうと藍くんは「別の仕事あるから、またね」と言って事務所を出て行ってしまった。
藍くんのストールを借りた私はその後の打ち合わせで、翔くんや四ノ宮さんにしつこく聞かれたのは言うまでもなかった。




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