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□藍とクッキーシュー(拍手小話)
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「藍くん、ハイ、どうぞ」


ハルカがボクに黄色くて丸いものと紅茶を差し出した。
これは見覚えがある。

マザーコンピューターに瞬時に画像を送ると検索結果がでてきた。
4月にショウとナツキと行った懇親会で頼んだ…一つ2千円の…


「クッキー…シュー?」
「はい!ここのお店のクッキーシューとてもおいしいんですよ!」


ニコニコ笑顔でお店の情報なんかをボクに教えてくる。でもさぁ…


「…ねぇ、ハルカ。ボクがロボだってこと忘れてない?」


ハルカはボクが食べなくても平気なこと…知っているよね。
むしろ食べることはエネルギーを消費するんだけど。


「はい、知っています。でも、翔くんが【藍のヤツ、クッキーシューを変わった食べ方するんんだけどさ、それってそれくらい好きってことだと思うんだよな】って
言っていたので…だからお好きかなと…」


あ、あの時はシュークリームっていうものを知らなかったんだよね。ましてやクッキーシューなんて。

懇親会のあとすぐにネット検索して…
クッキーシューは皮を剥いて食べるものじゃないって分かった。
ショウ達のあの驚きがその時理解できた。


「…ショウ、他に何か言ってた?」
「…?他って?」
「たとえば、食べ方…とか」
「いえ?聞いてませんけど」
「そ、そう」


どうやら余計なことは言っていないようだね。


「で、藍くん、クッキーシュー、お嫌いですか…?」
「別に…好きとか嫌いとかないよ。もともと食物を必要としていないし」
「…そう、ですか…」


そう答えると、ハルカはしょんぼりしちゃった。
ボク、この顔弱いんだよね…


「でも、コレは特別」
「え?」
「ハルカがもってきたコレは好き」


それは嘘じゃない。ハルカが関わったこと、嫌いになんてなるはずがないよ。
エネルギーの消費とか関係なく。


「よかった〜…」
「このクッキーシューは特別。だから特別な食べ方をするよ」
「特別な食べ方…ですか?」
「そう、ハルカがボクにこれを食べさせて?」
「…え?」
「聞こえなかったの?このクッキーシューをボクに食べさせて」
「ええええええええええええええええ」
「早くして。ほら、紅茶が冷めちゃうよ」


ハルカの顔がみるみる赤くなっていく。
心拍数も急上昇。
チラリとクッキーシューに視線を落としたハルカはおずおずとそれを手に取りボクの口に運ぶ。

サクッ―――、軽快な音が響く。
緻密に計算された皮と濃厚なクリームがボクの口の中で混ざり合う。
美味しいってこのためにある言葉だよね。


「ん、おいしい」
「本当ですか!よかった!」


頬を真っ赤にしながらもハルカは笑顔になった。
やっぱりハルカは笑顔がいい。


「ねぇ、君の分は?」
「あー…私は違うのを事務所でいただいたので」
「そっか…じゃぁ、味見したいよね」
「あ、いいですよぉ!コレは藍くんにもらってきたんで!私のことは気にしないでく……んぅっ」


ブンブンと顔を振るハルカの顎を掴んだボクはハルカにキスをした。


「…どう?味は」


唇を離すとハルカは俯いてしまった。
照れてるハルカ、可愛いすぎるでしょ。


「と…とても…おいしい、です」


ボクはハルカの唇の方がおいしかったけどね。
なんて、言ったら君はどういう反応をするのかな?

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