BASネタバレ有

□お揃いのモノ
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「大分モノが増えてきたね」


洗面台に嬉しそうにボクと色違いの歯ブラシとコップを並べるハルカの姿を、洗面所の入り口でボクは見つめていた。
何も洗面所に限ったことではなく、スリッパやマグカップ、生活必需品のほとんどは彼女とお揃いか色違いの物になっている。


「はい!あ…、ご迷惑でしたか…?」
「そんなこと言ってないでしょ。というか…ここまでペアにする意味なんてあるの?」


正直、使えればペアじゃなくてもいいと思うんだけど…


「意味はないのかも、ですが、憧れで…」


頬を赤く染め俯いてしまったので、彼女の傍へと行き顔を覗きこんだ。


「憧れ?」
「はい…、あ、あの…好きな人と一緒に住んだらペアの物で揃えたいなって…」
「現状は、君がオフの日に泊まりに来る程度だから一緒に住む、というのは違う気がするけど」
「え、あ、そ、そうです、よね…」


そう言うハルカは見る見るシュンとしていくので、見ていて少し面白い。
…なんてことは流石に本人には言わないけど、このままじゃどんどん落ち込んじゃうから言っておこうかな。

俯くハルカの顎を掴んで上を向かせ軽くキスをしてからボクは言った。


「君が寮を引き払ってボクの部屋に来ればいいんだよ。そうしたら【一緒に住む】ことになって、君の【憧れ】が叶うってワケ」
「え?」
「え?じゃないでしょ。まったく…このボクが一緒に住んであげるって言っているの」
「で、でも藍くん…!」
「なーに?」
「藍くんアイドルですし…」
「大丈夫。ここの外観どう見てもスタジオだから。それにセキュリティにも万全を期しているしね。そこらへんでパパラッチされる芸能人よりは安全だよ」


そう言ってほほ笑むと、ハルカの大きな瞳が潤んで、やがて一滴頬を伝って流れた。


「バカ…、何も泣くことないでしょ」
「ごめんなさい、でもすごく嬉しくて」
「でもここ、スタジオがメインだから君の部屋とは少し違う。それでもいいならの話だけど」
「いいえ、【ここが】いいんです」


瞳を潤ませながら笑顔を浮かべるハルカの目元を拭うようにキスを落として。


「藍くんとマリンゼリーを食べたり演技の練習をした、たくさんの思い出が詰まった【ここ】で一緒に暮らせるなんて幸せすぎて、怖いです」
「…何それ。大げさ。そんなことで怖いならこの先もっと怖いんじゃない?」
「どうしてですか?」
「だっていつか永遠の別れが来るその時まで、ずっと一緒に暮らすんだし」
「ふふ、そうですね」


彼女がボクの背中に腕を回して抱き着いてきたので、頭にキスをして優しくなでる。


「君のその笑顔が絶え間なくあるように…ボクが幸せにするから」





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