BASネタバレ有

□君のぬくもりに触れたくて(前)
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【side:美風 藍】

「……」
「アイア〜〜〜イ!さっきからスマホ見つめちゃって〜〜〜後輩ちゃんにドッキドキラブメール送ってるのかな〜〜〜?」
「メールじゃなくてカレンダーを見ているの。ていうか近いから離れて」
「へぇ〜?そういえば明日、予定より1日早くロケ終わるもんね!あ、あれだ!【ボク、もうハルカに会いたくて我慢できないうずうず☆】って状態だ!いや〜いいね、ラブラブで!」
「うずうず…?まぁ…否定はしないけど」
「…アイアイが超素直!どうしちゃったの!」
「うざいキモい」
「ヒドイのは変わらないのね!」
「うるせぇ嶺二。人が飯食ってる隣で大声で騒ぐんじゃねぇよ」
「愚民は静かに食事すらできんのか」
「カミュ、てめぇもだ。晩飯食ってる目の前で甘いもん並べまくって食ってるんじゃねぇよ。飯食え飯」
「ふん。貴様にはこの良さが分からんのか。この地は非常に良いスイーツに恵まれている。シルクパレスと提携を結んでだな…」


…相変わらず常にうるさいレイジ、ランマル、カミュの三人とボクは1週間のロケに来ていて、今日は5日目のロケが終わり、とある飲食店で夕食をとっているところ。
ロケ期間中、ボク達の息が何故か抜群に合ったらしく予定していた1週間よりも1日早い6日で終わることになった。

6日目の明日で終われば7日目はシャイニングの何かがなければボクはオフになる。
彼女のハルカには前々からロケの事を説明していて、彼女も最終日の7日目は空けておいてくれると言った。
けれどその前日でロケが終わる。彼女に連絡すべきなんだろうけど、ボクは今悩んでいた。

仕事が早く切りあがる旨を伝えるにしても、彼女にも仕事があるだろうしそのことで気を使って欲しくない。でも…それを伝えて彼女が少しでもボクの事を考えてくれたなら…嬉しいかも。
今までほぼ毎日一緒にいたから、ボクが機能停止していた以外でこんなに長く離れるのは初めて。だから離れている間、ハルカがボクの事を想ってくれているのかどうかなんて考えた事がなくて。

でもね、ボクは離れている間、君の事を思い出したことなんてないんだよ。だって君の事考えない時間なんてなかったから。
ハルカがボクの為に作る曲や、ボクの為に紡ぐ言葉、そして何よりボクの為だけにむけてくれる大好きな笑顔を体内のあらゆるデータベースにインストールしているからね。

言ってしまえばどこにいてもハルカとともにいる、みたいな感じ。
あぁ…早く本物のハルカにあってこの腕で抱きしめてキス、したいな。それから…その先の事も。


「お〜い、アイアイ」
「なに」
「麗しの姫君へ連絡はしたのかい〜?」
「機密事項だよ」
「えー、れいちゃんに教えてくりくり〜」
「そんなことより酒臭いんだけど」
「えへへー今日は気分がいいから酔っぱらってま〜す」
「…絡み酒ならランマルにでもしてよね。ボクは先に部屋に帰らせてもらうよ」


酔っ払いの相手なんて絶対イヤだからボクはレイジに抱き着かれる前に席を立った。


「アイアイつれな〜い、ランラ〜ン〜アイアイが冷たいよ〜」
「グフォッ!食ってる最中に後ろから抱き着くんじゃねぇ!だぁああ!藍はまだガキなんだから休ませてやれよ」


ランマルのガキって言う言い方に引っ掛かりを覚えたけど、折角の助け舟だしここは乗らせてもらおうかな。


「じゃ、ランマル。あとはお願いね、ここの支払いも。ボクまだガキだから財布持ってきてないし」

そう言ってボクはランマル達をチラリとみて店を後にした。
一瞬だけ見えたけど…カミュ、角砂糖直接を食べていたような…まぁいいか。
背後から「嶺二、てめぇが誘ったんだからてめぇが払えよ!」ってランマルが言っているのが聞こえてきた。


それからホテルへと向かう道中、スマホを取り出してやはり連絡すべきか迷ったけど、連絡はしないことに決めた。

理由は気を使わせたくないのと…彼女の驚く顔が見たかったから。

早く明日にならないかな。

君に逢いたくて仕方ないよ。




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