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□snow whiteD
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「受付開始予定時間丁度っと…」


ボクはハルカと別れ、当然のごとく1分の前後もなくオーディション会場に到着した。そこには本日オーディションを受けるトキヤ、オトヤ、マサト、レン、レイジが既にいて。

…ふぅん、皆それぞれに台本を読んで最後まで役作り…か。ただ一人、レイジだけはトキヤにちょっかいを出して怒られているようだけど。


「やぁ、アイミー。今日はお手柔らかに頼むよ」


ボクの姿を見つけたレンはボクに声をかけてきた。
すると台本を読んでいた他の面々が一斉にボクの方を見てくる。頭の先からつま先まで何度も確認するかのように。

あぁ、そうか…先日ハルカとボクが入れ替わって以来皆結果を知らないんだった。
レンに至ってはその場にいなかったからそのことすら知らないけど。

さて…、ここで【外見はボク、中身はハルカ】を装えば、白雪姫役は【ハルカの外見をした中身はボク】という可能性が彼らの頭には消えずに残る。それを考慮して辞退する人間が出てくるだろうか。
というのも白雪姫を起こすシーンは多角度から撮影されるため本物のキスをしなくてはいけない。
もし、外見はハルカとは言え中身は男のボクとキスをしたい男がいたら…悪いけど少し距離を取らせてもらうことにするよ。

でも…フェアじゃないか。ボクのハルカデータを持ってすれば彼らをだますことは容易にできる。けどそれで役を勝ち取っても意味がない気がする。
条件が同じ中で競ってこそ実力の差を見せつけられるんだから。


「レン。君がボクに勝てる確率は0%」


普段よりちょっと大きめの声でそう言っておく。他の人にもはっきり聞こえるように。


「美風さん…あなた戻ったのですか?」


トキヤはボクに近寄ってジロジロ眺めている。


「お陰様で」
「そうですか…!それはよかった」
「えー、何々?戻ったってどういうこと〜?」


トキヤの背後からレイジが顔を出した。にしても…トキヤの顔。変化はないように見えて少し嬉しそうなんだけど。そんなにハルカとキスしたいわけ?


「何でもありません。あなたには関係のないことです」
「え〜〜〜何〜〜〜僕ちんだけ仲間外れ〜??」
「ウルサイよレイジ。そんな暇あるなら腹筋でもしたら?ボクが負けることなんてまずないけど、万が一何かあってレイジが王子役になった時、衣装の上に贅肉がのっていたらダサすぎ」
「ぜいにくって…ちょっと言い過ぎだよー!僕ちんそんなにお肉のってないぞ!?」
「ふぅん…これで、ねぇ…」


むぎゅぅとレイジの横っ腹を掴むとレイジは「アイアイのエッチ〜」って言いながらトイレに駆け込んでいった。


それを見ていたマサトとオトヤも近づいてきて



「美風先輩良かったですね。無事にお戻りになれて」
「まぁね」
「俺、藍ちゃんが戻らなかったらどうしようってずっと悩んでたんだよね〜!見た目が七海なら藍ちゃんでもキスの相手はいいかなって思ったけど…やっぱ七海がいい!」
「音也、直球にも程があるぞ…」
「えーそうかなぁ?だって皆七海とキスしたくてオーディション出るんでしょ?」
「お、俺は…その、舞台など経験がないから出演してみたいだけで…決して七海の柔らかそうな唇に触れたいとか…そういう訳ではないぞ」
「私はしたいですよ(キリッ」
「イッチー、そんなキャラだったか?」
「失礼ですね。欲望に素直なだけです」
「あーはいはい…」


ハルカのパートナーであるボクを目の前にして堂々と言ってくれるじゃない…


「あのさぁ、盛り上がってるところ悪いんだけど」


ここは先輩としてちゃんと言っておかないとね。


「ボクが芸歴も知識もボクに劣る君たちに負ける訳がないでしょ。残念だったね、今回は諦めてもらうよ」


腕を組み、オトヤ・トキヤ・マサト・レンに視線を巡らせる。


ハルカの相手役を決めるオーディション開始時間まで、あとわずか。






〜そのころの寿嶺二(25)〜


「あ〜もう冬ってトイレ近くなるから困るっ」


用を足していました

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