series
□snow whiteC
1ページ/1ページ
白雪姫の王子役のオーディション当日。
先日、ハルカとボクが入れ替わるなんてありえないハプニングがあった。
今もその原因は不明だけれど、元には戻ったしその後特に異変もない。
元の体に戻ってからのボクは、貴重なオフをそのハプニングで潰してしまったため役作りにいそしんだ。
幸いにも白雪姫役のハルカはボクとほぼいつもいるから練習相手には困ることはなかった。
…ハルカの演技力は、うん、努力は認める。
けど、人前で見せられるかといったらそれは違う。
まだまだレッスンが必要だね。
「それじゃ、時間だからボクは行くよ」
劇中曲もある程度は仕上がってきて、オーディション受付開始時間まで二人で編曲作業をしていた。
「はい!頑張ってくださいね!」
「…頑張るのは当然。ボクが役を勝ち取るのも…ね」
「あ、そうだ藍くん」
「何?」
ハルカは近くに置いていたカバンから何やら小さな袋を取り出した。
「これ、受け取ってください!」
「…うん?」
袋の中から取り出すと、携帯のストラップだった。
「この前トモちゃんとネズミーランドに行ってきたのでお土産です!見てくださいっ」
そういうとハルカが自身の携帯もカバンから取り出して見せる。
「ネズミーランドには白雪姫のアトラクションがあるんですけど、そこのショップでペアのストラップが可愛くて買っちゃいました。」
ボクに手渡されたのは王子のモチーフ。
一方ハルカは当然のごとく白雪姫ので。
「藍くん、少しかざしていただけます?」
「こう?」
シャラン、と紐の部分をもってかざすと、ハルカがその横に自身のストラップをくっつける。すると、
「…ハート?」
「そうなんですー!これ、その…」
「?」
「えっと、これをつけている人は…こ、恋人がいる印…としても有名で…」
「うん、それで?」
「藍くんにもつけていただけたら…と…でも藍くんアイドルですし…」
「つけられないね」
ボクはアイドルだから恋人なんていてはいけないの。
でもハルカはそうじゃない。
ならさ…
「ハルカの携帯を貸してくれる?」
「え?はい、どうぞ」
ハルカがつけていたストラップを外してボクがもらったストラップをつけた。
そして白雪姫のストラップをハルカに返した。
「藍くん?」
「これでよし、と。ボクはつけられないし、持っているのもどこで見つかるか分からない。
だからハルカが今度ボクの部屋に来たとき、置いて行って。」
それに、
「ハルカが王子の方をつけていた方が男除けにはなるでしょ?」
「お、おとこよけって…っ」
「どうかしたの?これを持っていると恋人がいる印なんでしょう?」
「そうですけど…」
頬を赤らめ下を向くハルカ。
もう、ボクがその仕草に弱いの知っているのかな?
ここ、いつ誰が来るか分からないけど…今なら少しだけいいか。
ボクはハルカの顔を上に向かせ、唇に軽く触れ合うだけのキスをした。
「…オーディション受かったらお祝いのキス、ハルカからしてもらうからね」
「〜〜〜〜っ!!!」
「じゃあね、ハルカ」
ボクはオーディション場所へと向かうべくスタジオを後にした。