series
□ボクが君でA
1ページ/3ページ
打ち合わせを行う会議室、ドアの前にボクはいた。
「……よし」
ドアに手をかけた瞬間。
「七海ー!」
ボクの後ろから声がしたので、そちらを振り返るとオトヤがこちらに走り寄って来た。
この姿で最初に会うのがオトヤでいいのやら悪いのやら…
「七海!もうすぐオーディションだね!藍ちゃんには悪いけど…俺、ゼッタイ王子役やるから!」
…そんな真剣な眼差しもできるんだ。
それにボクに宣戦布告とはいい度胸じゃない?
でも今はハルカだから応援しないといけないのか…複雑。
「何言ってんの。ボクこそ王子のイメージにぴったりだと思うけど」
「は…、え?七海…?」
何言っちゃってるのボク!!??
うわぁ、オトヤの目が点になっているよ。
当然だよね。今、ボクはハルカの姿なんだから。
「…って美風先輩ならきっと言うと思いますよ…っ」
「え、あ、あぁ、うん、そうだよね、アハ、アハハ」
「あ、あの…っ中に入りません?」
「そ、そそそうだね」
ふぅ、何とかごまかせたかな?
オトヤとボクは会議室に入ると、ショウ、マサト、トキヤがすでにいた。
「よっ!七海、おはよ!白雪姫の役作り捗ってるかぁ〜?」
「え、えぇ、まぁ…」
「そ、その……」
「?どうかしたんですか?翔くん」
どうして顔を赤くしてボクを見つめているの、ショウ。
なんか嫌な予感しかしないんだけど…
「あの、さ…もし、その…藍のヤツが忙しかったら…俺がキキキキッキスの練習台になってやっからよ…遠慮すんじゃねーぞ…っ」
そう言うとショウは帽子を目深に被って俯いた。
…予感的中。
まぁ、ショウに関して言えば以前からハルカが好きだとは聞いていたけどさ。
そもそもそこでどもるのに練習相手なんか務まるわけ?
それにさ。
「悪いけどさせるつもりは毛頭ないから。諦めなよ、ショウ」
「…………え?」
しまった…思ったことがつい口から…
「……今の、美風先輩に似てませんでしたっ??先輩の真似が最近得意なんですよ…っ」
「…似てるっていうか、まんま、藍がここにいるような感じだったぞ…すげーな七海」
ふ、ふふ…ショウは単純で助かるよ。
にしてもこれで2連続での失態だ。
今まではコンピュータが全部制御していたからこういうことはなかったのに。
人間って面倒…