series

□ボクが君で@
1ページ/1ページ

こんなこと、普通に考えたら有り得ないでしょ。

非科学的すぎる。

ボクがハルカになるだなんて…

白雪姫の王子役のオーディションまで日がないっていうのにさ。

もし戻れなかったら…と思うと恐ろしいよ。

ことの発端は、神宮寺財閥秘蔵のハーブティーを飲んだハルカが突如ボクに頭突きをしてきた事に始まる。
ボクはその衝撃で緊急アラートが発動して再起動するはめになった…までは覚えている。


再起動が終わって目が覚めるとボクの顔が目の前にあって。

ハルカはコトの状況を理解しきれずに目をこすっている。


「…目が覚めた?ハルカ。いや、今は【藍】…だね」
「あれ?何か見覚えのある顔が…どこででしたっけ?」
「見覚えも何も、今目の前に見えているのは君だし」
「はい?」
「ボクとハルカが入れ替わったらしい」
「…藍くん?どうかしたんです?頭でも打ったんですか?」


頭は確かに打ったとも。

君に頭突きをされてね!

そして中身がいくらハルカとはいえ、ボクの顔できょとんとして首傾けても全っ然、可愛くない。
それに、なんかボクがオカシイ人みたいな言い方やめてくれるかな。
…人じゃないけど。

手っ取り早く理解してもらうには…
あぁ、ちょうどよかった。
ハルカの手鏡が近くにあったのでボクはそれを渡した。


「これで理解できるでしょ」
「…?なんで藍くんが…?しかも私の言っている通りに口が動いて…
「だから、今、美風藍の中には七海春歌がいて、君の中にボクがいるの」
「えええええええええ!?」


ボク、そんな声出せたんだ…新発見…じゃなくて。


「ようやく理解してもらえたようだね」
「わわわわわっ私が藍くんですか!?」
「そう。とりあえず落ち着いて。謎の解明は後でするとして、今日これからどうするか決めよう」
「は、はいっ!…私が藍くん…!やはりお肌ツヤツヤのプルプルですね」
「当たり前でしょ。ボクはアイドルなんだから。手入れも仕事のうちだよ。
ハルカも見習いなよ。クマはできているし、肌も乾燥している」
「う…っ痛いところを…」


でもボクの肌より柔らかくていい匂いがする。
これが女の子…か。


「で、話を戻すと、ボクは…えぇと、【美風藍】は今日オフだから、ハルカには悪いけどボクの家で大人しくしててもらうよ。
不幸中の幸いとはこのことだね。で、ハルカのスケジュールは?」
「今日はこのあと午後からST☆RISHの方々と新曲の打ち合わせ…です」
「…午後ってもう2時間ないじゃない。ギリギリまでまって戻れればいいけど、君は新人だから早くいかないといけないのか」


入れ替わってしまったものは仕方ない。
納得なんかできないけど、これが現実だしね。


「ボクが七海春歌として打ち合わせに出るよ」
「ええええ、だ、大丈夫ですか!?」
「…ボクのハルカデータをもってすれば…って今ハルカだから検索できないじゃない」


はぁ…


で、気づいたけど、ボク今人間なんだよね。
現在起きている事象が不可思議すぎて、そんなことを考える余裕なんてなかった。


「あ、あの…藍くん…?」
「白雪姫のオーディションまで日がないっていうのに…。まぁ、側でハルカを見てきたから大体は把握しているよ。任せて」
「あまり無理しないでくださいね?」


ハルカが心配してくれているのは分かるんだけど、自分に見おろされているとどうにも複雑だよ。


「ボクを誰だと…って違った。【私にお任せくださいっ!】…こんな感じでしょ」
「うわぁ、凄いです!」
「ボクの方はそれでいいとして、問題は君だね。
ボクの体の取扱説明書がそこの本棚に入っているから読んでいて。くれぐれも余計なことはしないでよね」
「は、はい!藍くんの体をめちゃくちゃ観察して、撫でまわして堪能します!…じゃなくて大人しくしてます!」
「ちょっと。変態じみたことをさらっと言わないでくれるかな…。
でも、まぁ余計な事さえしなければバッテリーももつはずだから。あぁ、そろそろ打ち合わせに向かう時間だ」


ボクは念のために博士の携帯番号をメモしてハルカに渡し、ハルカに渡された荷物を持ち打ち合わせに向かった。


こうなったら、完璧にハルカを演じきって見せるんだから。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ