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□snow whiteA
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事務所で解散となったボクとハルカ、オーディションに参加する面々でマスターコースのレッスン室に来ていた。
あ、トキヤは「台本を静かに読み解きたいので、私は遠慮します(キリッ」と言ってさっさと帰って行ったけど。
何?トキヤの真似似てないって?
そんなわけないでしょ、ボクの完全なトキヤデータを甘く見ないでよね。
で、正直ボクも台本を静かに読みたいから来たくはなかったんだけれど、ハルカが曲のイメージを掴みたいらしい。
別にボクもそれについていくことはないんだけど、レンは早速レッスンと称してハルカに触れかねないし、オトヤも目を離すとすぐ接近してくる。
ハルカはどうせうまいこと言いくるめられて逃げられないからボクが助けてあげないといけないだけで、嫉妬とかそういうんじゃないから。
「レディ、早速だけどクライマックスのキスシーンの練習からしようか」
「えっ!い、いきなりですか〜…」
「そうだよ、オーディションは一回。愛を込めてキスをしないと恥ずかしがり屋のレディは起きてくれないだろう」
ほら、ね。
ボクの予想を裏切らないレンにボクは拍手を送りたいよ。仕方ない…
「オーディションで演じるシーンはそこじゃないはずだけど?レン」
「…アイミー視線が怖いよ。軽い冗談じゃないか」
「その呼び方やめてって何度言ったらわかるの。ボク、君の先輩だよ」
「今はライバルだよ、アイミー」
「そうだぞ、神宮寺。美風先輩にもっと敬意を払え」
…マサトはさすが常識人だね。
レンにも爪の垢を煎じて飲んでもらいたいくらいだよ。
「あ、じゃぁさ七海!ダンスのシーンやらない?」
「えっと…ダンスは苦手なのでまだ…うまくできないかと…」
「そんなの俺が教えてあげるよ!ね、七海!やろう!」
「きゃっ…」
オトヤもボクの想定通り…。
ちょっと、何腕なんかつかんでいるの、オトヤ。
「オトヤ。それもオーディションに関係ないシーン」
「え、あ、そうだっけ?って…!ごめん七海!腕掴んじゃって!」
オトヤは天然でアレだから厄介なんだよね。
ボクの近くでレイジは笑っているし。
事務所でも思ったけど、何が面白くて笑っているんだろう。
「レイジ、そのニヤケ顔気持ち悪い」
「アイアイひどいな〜!でーも、後輩ちゃんを守るアイアイかっわい〜〜」
「……はぁ?」
守る?ボクがハルカを?
ただ、ハルカに馴れ馴れしくされるのが嫌なだけ。
あぁ、同じことか。
「み、美風先輩〜〜〜…」
ハルカがボクに救いを求めるような声で呼ぶ声がしたからそっちを向いたら。…レンに腰を抱かれていて。
…またか、神宮寺レン。
「アイミーを呼ぶなんてつれないことしないでおくれよ、レディ」
「で、ですが…っ」
「レン、何しているの」
「何って、見たらわかるだろう?愛を深めているんだ」
「どこをどうみてもレンがハルカにセクハラをしているようにしか見えないけど?」
ベリっと音がしそうなほど勢いよくボクはハルカをレンから引き剥がし、ボクの背中に隠す。
こういう時こそマサトにも動いてもらいたいけど、一人ですでに台本読み始めているし。
「障害があるほど愛は燃えるね、レディ」
「レン一人で燃えていなよ」
「アイアイ、今の王子っぽーい!まさに、悪から姫を救出した王子って感じ!」
「本当!藍ちゃん王子っぽーい!」
「俺は悪役かい…」
「……くだらない。レッスンしないならボク達は帰らせてもらうよ」
さっきから全然レッスンのレの字もしていないし、時間の無駄だよ。
「帰るならアイアイ一人で帰ればいじゃーん!後輩ちゃんだってー、台本読みしたりー、曲のイメージ掴みたいでしょー?」
「それは…そうです、が…」
チラリとボクを見上げるハルカ。
あぁ、そんな目でボクを見ないでよ。
キスしたくなるでしょ。
「ハルカの練習相手はボクがやる。彼女はボクのパートナーだしね。曲に関してもボクがサポートする」
そう言うとボクはハルカの手を取りレッスン室を後にした。
後ろからはレイジの声が聞こえたけれど、オーディションまで1週間しかない。
無駄な時間なんて割いてらんないから。