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□strawberry birthday
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【strawberry birthday】


今私たちがいるのは神宮寺さんのバースデーパーティーが行われる早乙女学園の…プール。
えっと…神宮寺さんなら豪華ホテルとかレストランが似合うと思うんだけど…どうしてプールなんだろう??


「あー!アイアイに後輩ちゃーん!遅いぞっ!コッチコッチ!」


声のする方に視線を向けると、寿先輩が私たちの姿を見つけて手招いていた。


「遅れてなんていないよ。パーティー開始30分前だし。いつもぎりぎりのレイジがもういるなんて…明日は大雪が降るかもね」
「へへん!ぼくちんだってやるときゃーやるのよ!ってなわけでホイ!」


そういって寿先輩がさし出してきたのは…


「イチゴの頭巾とヘアピン…?」
「そう!ミューちゃんとレンレンのユニットソングにストロベリーってフレーズあるでしょ?だからそれにちなんで、皆イチゴの何かしらを身に着けるようシャイニーさんに言われているんだよっ!れいちゃんだってほら!」


寿先輩はクルリと私たちに背中を見せた。寿先輩が着ているのは背中に大きくイチゴの刺繍がされているピンク色の可愛らしいスカジャンだった。


「ダサいからイヤ。そのスカジャンもセンスを疑うよ」


藍くんは差し出された頭巾とピンからぷいっと横にそむけてしまった。でも、藍くんがこれつけたらとても似合うと思うんだけどな…


「ふふふ!ダメだよアイアイ!シャイニーさんの【社長命令】なんだからさ!」
「ねぇ。その命令に何の意味があるの……でも命令なら仕方ない、このヘアピ…」
「残念でしたー!アイアイはこっちでーす!」
「な、ちょ…っ」


寿先輩は藍くんなんておかまいなしにズボッとイチゴの頭巾をかぶせ顎の下でマジックテープを止めた。
どうしよう…!!!ムスッとしているけれど物凄く可愛い…!でもそんなこと言ったら絶対怒られてしまいます…!


「うーわー!アイアイ超かわいい!!!写メ写メ!」
「やめてよね!ハルカも笑ってないでレイジを止めて!」
「えと…っ」
「後輩ちゃんにはこのヘアピンをれいちゃんがつけてあげ…ぶゃぁっ」


ドガン!と下から物凄い地響きと音がしたのでそちらに目を向けると、藍くんが思い切り寿先輩の足を踏んでいた。先輩…足、平気かな…すごい音したけど。


「ぎゃああああああああああああああ!足の指折れた!今の音絶対おーれーた!!!!」
「そんだけピョンピョン跳ねているなら折れていないよ、安心して。ヘアピンはボクがハルカにつけてあげるね」


藍くんは寿先輩の手からヘアピンを半ば強引に奪い取ると、私の髪につけてくれた。
寿先輩の事、放っておいて大丈夫かなぁ…さすがにちょっと心配。


「七海くん来ましたね。あぁ、あなたという人はイチゴのヘアピンが霞んでしまうほど可愛らしい…」


私の背後からゾクリとするような声がしたのでそちらを振り返ると、大きなイチゴの果実の着ぐるみを着た一ノ瀬さんと。
全身ピンクのロリータファッションを身に纏い、髪は金髪のゆるふわ巻きなロングウィッグ、手にはイチゴがたくさん入った籠を持っている、ムスっとした翔くん。…小傍唯ちゃんと言った方がいいのかな?

いつもはロックなファッションで決めているけれど今日はスタッズの部分が全て本物のイチゴになっている黒崎先輩に、一十木くんは前髪をイチゴの髪留めで結んでいて、なんか可愛い。
四ノ宮さんは眼鏡のフレームがイチゴの形で、本人はとても気に入っているとのこと。

聖川様は紺色の生地にイチゴ柄のジャケットで、なんでも聖川財閥の高級ファッション部門の新作らしい。…聖川財閥のデザイナーは頭大丈夫なのでしょうか…。

カミュ先輩に至ってはイチゴに練乳をたっぷり掛けて召し上がっている…もはやアイテムはいらないのかも。
足元には空になったと思われる練乳のボトルが山になっています…!

と、主役の神宮寺さん以外は皆、寿先輩の言うとおりイチゴの何かを身に着けていた。
藍くんはというと一際目立つ一ノ瀬さんの着ぐるみ姿を上から下まで観察するように見て、口を開いた。


「ねぇトキヤ。最近キャラ替えたの?節分の時は鬼に扮していたし、今日もそのイチゴの着ぐるみ。路線変更したとしか思えないんだけど」
「それは違います、美風さん。七海くんは私の緻密なリサーチによると可愛いものが好きだということが判明しました。
いつも恥ずかしがって私に抱き着いてこない七海くんですが、このように可愛い姿ならば抱き着きやすくなるでしょう?
さぁ、私の可愛い人…遠慮せず飛び込んできてくださって構いませんよ」


一ノ瀬さんが目を瞑り私に向かって腕を広げた。
えぇと…ど、どうしたら…


「ハルカ、トキヤなんか放っておいて行こう」
「え、あ、はい…」


藍くんは耳元でそう言うと、私の手を取り一ノ瀬さんのもとから離れた。
するとその背後から、


「トーーーーーーーーーーーーーキヤくーーーーーーーーーーーん!その着ぐるみさんに抱き着いてもいいですかー!」
「うわっ、やめ、やめなさい!四ノ宮さんバランスが崩れ…ちょ、わ、あぁああ」


バシャーンッ


「だ…っ、誰…か!助け…っ」
「あー!トキヤだけずるい!プールに飛び込むなんて!いいなぁ〜楽しそう!」
「いいから…っはやく…、私を…っ」
「音也…今のはどう見ても那月が飛びついてバランス崩してたぞ」
「着ぐるみが…っ、水を…っ吸って…」
「それにしても、一ノ瀬はここ最近なんだか楽しそうだな」
「ひじり…か…わ…さ…ほんと…おぼれ…っ」
「…その着ぐるみはロックじゃねぇけど、飛び込むのはロックだな」
「何…とちおとめが切れただと?おい、貴様…四ノ宮といったな。あまおうを今すぐ調達してこい」
「はぁい。僕もいちごちゃん好きなんで、少し分けていただいてもいいですか?」
「…フン。好きにしろ」


なんていうやりとりが聞こえてきた。
一ノ瀬さんの着ていた着ぐるみ、かなり大きかったけれど…無事にプールから上がれたのかな?
そんなことを考えながらも腕を引かれたまま歩いていると、本日の主役である神宮寺さんが反対側からこちらに手を振りながら歩いてきた。
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