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□藍とコタツ〜あふたぁ〜
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【おまけ〜先輩3人が帰った後〜】
雪見だいふくと水炊きを締めのうどんまで完食したレイジ、ランマル、カミュは満腹になって満足になったのかそれぞれの自室へと引き上げて行った。
帰ってくれるのは喜ばしいことだけど…彼らが食べた後のテーブルはグチャグチャで最悪。
「ふぅ…やっとウルサイのがいなくなったよ。にしても…せめて食べた食器をキッチンへ持っていくくらいしていって欲しかったんだけど」
「それじゃあ私、片づけるので藍くんは引き続きゆっくりしていてください!」
ハルカがそう言ってコタツから出ようとしたので、ボクは彼女の腕を掴み引き留めた。
だってさ…
「片付けなんて後でいいよ。ようやく二人きりになれたんだしさ…ね?」
「…そうですね」
邪魔な3人が帰ったのだから離れてコタツに入ってもよかったんだけど、もう少し寄り添っていたいと思うなんて、ボクも変わったと思わない?
「付き合いとはいえ普段こんなに食べないから予想外にエネルギー消費しちゃったよ。それに、カロリーも取りすぎた」
「ふふ…、食べてすぐ横になると牛さんになっちゃいますよ?」
ゴロリと横になったボクをハルカは振り返りながら小さく笑っていて。
「…ロボのボクがなるわけがないでしょ。そもそもその言葉は食べてすぐ横になったら太るという意味じゃないんだ。知ってた?」
「そうなんですか?」
「そう」
ボクはそういうと左腕を横に伸ばし「おいで」とハルカを呼ぶ。
すると彼女はその意を理解したのか頬を赤らめながらボクの左肩口に頭をゆっくりと乗せて横になった。
そして伸ばしていた腕を曲げハルカの頭を撫でながら話し始めた。
「【食べてすぐ横になると牛になる】っていう言葉は太るという意味じゃなくて、怠け者になるという警告なんだ。
…ちなみに牛が食べてすぐ休むのは食べた草を消化する為にとても時間がかかり、身体に負担を与えないようにしているからであって、怠けているわけではないんだけど。あくまで人間の目から見た勝手な想像からきた警句なんだよ。理解できた?」
「凄いです!藍くんは本当に何でも知っているんですね!」
ボクの説明に感動したのか瞳を輝かせながらハルカはボクを見つめてくる。
「はぁ…いつも思うんだけどさ、君…ボクがロボットだって本当に理解しているの?」
「していますよ」
「だったら。ボクに知識量があるのはすぐ分かると思うけど」
「藍くんがロボなのは理解していますけど…その…そう見えないというか…」
「こんなに感情がない人間なんていないでしょ、普通」
「いいえ、藍くんはちゃんと感情があります!」
思いのほか彼女が強く言ったのでハルカの頭を撫でる手が一瞬止まってしまった。
「…だって…私の事、好きって…言ってくれるじゃないですか」
「確かに言っているけど、完全には理解できていないよ」
「そうでしょうか?たまに藍くん、私にヤキモチ…妬いてくれますよね?」
「あれは…っ、ただ、レイジやレンが君に馴れ馴れしくしていて君が困っていそうだから助けてあげていただけで別に……」
ただ…君の柔らかい髪や白い頬に触れていいのはボクだけなんだからって、思ったら無意識のうちに行動をしていたんだから仕方ないでしょ。
「それって…私を想ってくれての行動…ですよね」
「想う…?ボクは君が他の男に触れられるのが…ムカついて…ボクが傍にいて君を守ってあげなきゃって…」
「傍にいて守りたい、それが『好き』ということなんだと私は思います。そして私だって藍くんを守りたいんですよ」
そういうとハルカはボクに腕を回し強く抱きしめてきた。
普段ボクに抱き着いてくるなんてこと、滅多にしてこないからまたもボクは彼女に驚かされて。
やっぱり…人の感情は処理が簡単じゃないから難しいね。
「ふぅ…君に守られるほどボクは弱く出来ていないけどね」
「私、藍くん専用の冷えピタを毎日持ち歩いています!何かあっても大丈夫なように!」
「…ハルカの癖に気が利くね」
「…【癖に】は余計だと思います」
頬を膨らませるハルカの顔がなんとも珍妙で、ボクはそんな頬をつつき再び頭を撫でてやると、花のような満開の笑顔を彼女は浮かべた。
終
〜リビングの外〜
『忘れもの取りに戻ってきたらアイアイと後輩ちゃんがものすごーくイチャイチャしてて入りづらいの!ミューちゃん助けて!』
『なぜこの俺が貴様を助けてやらねばならんのだ。覗き見など愚民がすることだ』
『シーッ!声が大きいよッ!て言う割に視線、リビングにくぎ付けじゃん!』
『フンッ。美風には以前に鍵を勝手に開けられたからな。仕返しだ』
『…(うわぁ…ミューちゃん、することが小さいよ…っ)』
「(レイジ…カミュ…明日、覚えといてよ…)」
丸聞こえの美風藍さんでした。
おしまい。