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□藍とコタツ
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「ねぇ…それ、何なの?」
「んー?おこただよ!お・こ・た!日本のさむーい季節には欠かせないコタツちゃんでぇーす」
「なんだてめぇ炬燵も知らねぇのかよ。…っておいカミュ足ぶつかってるぞ」
「フン…足が長いだけだ。そんなことも分からんのか?これだから愚民は」
「あぁ?んだと…」


四角いテーブルとそのテーブルの脚の間に毛布のような分厚い布が挟まれている。それがいわゆるコタツなのは見れば分かる。
そしてそこにレイジ、ランマル、カミュが1スペースを使用して暖を取っていた。


「ボクが聞いているのはそういうことじゃないんだけど。どうしてハルカがレイジと密着してコタツに入っているわけ?」


テーブルの形は四角。ということは脚と脚の間に一人入る計算だとすると、ハルカ・レイジ・ランマル・カミュの4人で丁度いいはず。


「だって、僕たち4人で占領しちゃったらアイアイ入れなくなっちゃうでしょ?だから僕ちんと後輩ちゃんでつめたんだよー」
「別にボクは寒くないから君たちで暖を取りなよ」


ボクへの気遣いなんかより、レイジから一分一秒でも早く離れてほしいんだけど。


「こういうのは〜皆とわいわい入った方が楽しいしさ!」
「……」
「あの…美風先輩…入りません?」


炬燵布団を肩までかけているハルカに小首を傾げて上目づかいで見つめられた。
ホント…これで無自覚なんだから困るよね。


「カミュてめぇ!コタツの中に練乳いれるんじゃねぇ!」
「HOT練乳も悪くない」
「気持ち悪りぃ食い方だな…」


コッチはコッチでうるさいし。


「ちょっとランマルとカミュは黙ってて。はぁ…分かった。入ればいいんでしょ入れば」
「そうそう!炬燵でミカンもいいけど、やっぱアイスだよね〜♪」
「わぁ、いいですね!確か冷凍庫に雪見だいふくがあったと思います!取ってきますね」
「待って、君が行く必要はないよ。レイジ、取ってきて」
「え!?僕ちん!?」


ボクはコタツに入りながらレイジをチラリと見た。


「うん。ハルカがコタツからでたら風邪ひきかねないし」
「私なら平気です!というか寿先輩に動いていただくわけには…」
「そうそう!れいちゃんが風邪ひく方が大問題だと思うぞぉ〜僕、アイドルだしぃ」
「その心配はないよ」
「え?どうして?」
「バカは風邪ひかないっていうでしょ。ま、バカだから風邪を引いたという事実がわからないだけなんだけど」
「あの〜、アイアイ?れいちゃんそこまでバカじゃないぞぅ〜〜」
「いいからさっさと雪見だいふく持ってきてよ」
「うぅ…相変わらず後輩ちゃん以外には容赦ない…シクシク」
「うざい」
「ヒドイッ!!!」


渋々コタツから出たレイジはアイスを取りにキッチンへ向かった。


「HOT練乳に冷たいスウィーツ…これは中々いいかもしれん」
「アイスなんざよりすき焼きが食いてぇ…こういう寒い日は鍋だろ鍋」
「先輩がそう仰ると思って、お鍋の用意もしてあるんです!すき焼きじゃなくて水炊きですが…」
「水炊きも悪くねぇ…当然ポン酢はあるんだろうな」
「はい!」
「ふぅ…ようやくレイジが席を立ってくれたよ。で、君はいつまでそこにいるつもり?」


ボクは体をずらしてスペースを空け、コタツをめくり床を叩いた。


「みかぜ、先輩…?」
「君の居場所はいつだってボクの隣でしょ」
「え…と」
「早くしてくれる?」
「は、はいっ」


急かすボクにハルカは頬を赤らめながら隣へと移動してくると、ボクはランマルやカミュに気づかれないようにそっと腰を抱き寄せた。


「君の隣にいていいのはボクだけだよ。わかった?」
「…はい」


そう返事をするとハルカは顔を真っ赤にして炬燵布団で顔を隠してしまった。


「おい、炬燵まくるんじゃねぇ!寒いだろ!」
「あ!す、すみませっ」
「この炬燵に流れ込む冷気は我が祖国を思い出させる…」


するとリビングの扉が勢いよく開いた。…まぁ、アイス取りに行ったレイジが戻ってきただけなんだけど。


「じゃーん!雪見だいふくだぞー!!…って、後輩ちゃんいつの間にアイアイの隣に!!しかも僕ちんの時より密着してるぅ!!」
「先輩が…それを取りに行っている間です」
「はぁ…そんなの聞かなくても少し考えれば分かるでしょ…やっぱりレイジはバカだよね。そして、真面目に答える君もバカ」
「あんまり人をバカバカ言うもんじゃありません!お母さんそんな子にお前を育てた覚えはないわよ!」
「また昭和の古いネタ?いい加減うんざりなんだけど」
「昭和っていわないでぇええええええ」


まったく…レイジって本当うるさいよね。そう思っているのはボクだけじゃないみたいだけど。


「うるせーよ」
「ランラン!?」
「む…紅茶が温くなっている。淹れ直せ寿」
「ミューちゃん!?ていうか僕ちんパシリ!?」
「えと…紅茶なら私が入れますから…寿先輩は温まってください」
「ほーんと、後輩ちゃんは優しいよね!もうアイアイの彼女なんてやめてれいちゃんの彼女…………はファンの皆でーす☆や、やだなぁ、アイアイそんな怖い顔で見つめちゃいやん!…はい、直ちに紅茶淹れてきまーす!」


そういうとレイジは人数分のカップを持って再びキッチンへと向かっていった。
ふぅ……これで少しは静かになるかな。


「…ふふ」
「何がおかしいの?」
「…こうして揃うのが久々なので楽しくて」
「ふぅん…ボクとしては君と二人で過ごしたかったけどね。でもまぁ、君が楽しいなら今日は我慢してあげる」
「え?何を我慢するんですか?」
「…君にこういうコトをする事」


ボクを見上げる彼女の唇を掠めるようにボクはキスをした。





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