A

□tipsy
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藍と春歌の初詣のその後のお話です



たった甘酒2杯で酔っぱらったハルカと初めてのおみくじを引いたボクは、覚束ない足取りのハルカの腰に手を回しタクシーへと乗り込み寮の部屋へ向かった。
タクシーの中…寮に着くまでハルカはずっとボクの腕にしがみついていて。


「藍くぅん…」
「…何?いい加減腕を解放してほしいんだけど」
「う〜ん…暑いれすぅ…」
「今の室温は2度。それでも暑いなんてやっぱり君は酔っているね」


ボクの腕から離れたハルカは手袋やコートを脱ぎ、あろうことか着ている服を脱ぎはじめた。


「ちょっと、何してるの」
「暑いので洋服を脱ぐんです〜」
「脱ぐのは勝手だけど、風邪をひいても知らないよ」
「そうしたら藍くんに看病してもらいまぁす」
「はぁ?何でボクが…」
「眠るまでず〜っと手を繋いで傍にいてもらうんですっ」


上半身下着姿になったハルカはソファに座るボクの太ももに跨り首に腕を回してきた。
………酒の威力ってこんなにも凄いんだ。レイジの酔っぱらった姿は嫌というほど見ているけれどここまで豹変しない…いつも以上に面倒くさくなるだけ。
それと…ハルカが酒に弱いということや、酔っぱらったら甘えてくるということを最重要データとしてインプットしておかないとね。


「…普段の君とは大違いすぎて…正直戸惑っているよ」


そう言いながらハルカの腰に腕を回し見上げるボクのおでこにハルカは音を立ててキスを落とした。
君からのキスなんて…ボクが言わないとしてこないのに。


「イヤ…ですか…?」
「さぁ…どうだろうね」
「私は藍くんのこと好きですよぉ〜エヘヘ」
「そういうのはシラフの時に言うもんじゃないの」
「酔ってないですぅー!」
「いーや、酔っぱらっているね」
「むぅ…そういうこという藍くんにはぎゅーの刑ですっ」


ハルカはボクの頭を自身の胸元に埋めさせてきた。ちょ、く、苦しいって…っ
なんだかこのままやられっぱなしは癪に障る。
ボクは腰に回していた手で背筋をなぞりハルカの下着のホックを外してブラジャーをずらせばハルカの白く形の良い膨らみが姿を現す。


「ひゃんっ」


膨らみの先端部分を軽く甘噛みすると、ハルカは喉をのけ反らせた。


「やっぱり寒いんじゃない?君の体…冷えているよ」
「じゃぁ…藍くんの体で温めてくださいっ」
「…それ、本気で言っているの?」
「私はいつだって大真面目ですぅ」
「どういうつもりか分かっているのかな…」
「もちろんですっ」


いや…絶対理解していないよね、どう考えても。
そしてこの状況は男としていわゆる非常に【美味しい状況】ってヤツなんだろうけどさ…酔っ払いに手を出すほどボクは落ちぶれていない。


「はぁ……君が酔ったらこうなるってことはよく分かったよ。とりあえず酔いを醒まそう」


ボクに抱き着いたままのハルカを引き剥がしてソファに横たえさせ、テーブルの上に置いてあったペットボトルのミネラルウォーターを口に含みハルカに口移しで飲ませた。


「んっ」


突然の水分にハルカは驚きながらもコクンと水を飲んだ。
ハルカの口に入りきらなかった水が口の端を伝う光景は……うん、酔っていてくれて良かったと思う。

ねぇ今のボク、相当堪えていると思わない?半裸の彼女を目の前に理性を保っているんだよ?


「お水…もっと…」
「ほら…起き上がれるでしょ」


ペットボトルをハルカに渡すも首を横に振り受け取らない。


「…飲みたいんじゃないの?」
「飲ませ…て…くだ…さ」
「仕方ないな…これが最後だよ。次は自分で飲んでよね」
「ふぁ…い」


もう一度口移しでハルカに水を飲ませてやると今度は零さずに上手く飲み込んだ。
そこまではいいんだけど…


「……スー…」
「ハルカ…?」


名前を呼ぶも反応はない。返ってくるのは穏やかな寝息だった。


「スースー」
「まさか寝ながら飲み込んだの?器用すぎるでしょ」


その問いかけにもやっぱり返事はなくて。
はぁ……なんか色々疲れた…とりあえず毛布、か。

寝室から毛布を持ってきたボクはソファで眠る彼女にソレを掛け、その隣に静かに腰を下ろした。


「……博士に頼んでもう少し忍耐強さのレベルを上げてもらう必要があるね」


気持ちよさそうに眠るハルカの鼻を軽くつまむと『んんっ』と眉を顰めたものの目を開けることはなかった。


「ボクの気も知らずに…起きたら覚悟しておいてよ」



終。

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