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□藍と翔と春歌
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藍と来栖翔のその後のお話】

「きょ、今日はいい天気…だなっ」
「はい!それに昨日より少し暖かいです」
「……」


うぅ…藍の視線が怖ぇぇ…つか、藍からしてみればいつも通りなんだろうけどさ…こう無表情でじっと見つめられると非常に言いにくいんだよなぁ…。

先日、藍のパソコンで俺はちょっと大人なサイトをほんの息抜きに見たんだ。
いや、作詞に詰まって、気分転換ってやつだ!決して…ムラムラしたわけじゃないからなっ!
…そこで俺がちゃんと履歴を消せばよかったんだけど、うっかり消し忘れたがために藍にバレて、七海にも見られた。その上、七海にいたっては藍がそういうサイトを見たと思い込んでしまっているらしい。

で、今日は七海に弁明するため藍と仕事中の七海をつかまえた。


「あ、あのな!七海…」
「はい?」
「この前は…その、悪かった…」
「…?何か悪いことしたんですか?」


悪いこと…大人なサイトを見たのは悪いことなのか!?…まぁ人様のPCで見るもんでもねぇけど…


「悪いことっつーか…お前、見たんだろ?」
「何をです?」
「…ショウ、言いたいことあるならはっきりいいなよ」


い、言われなくてもわかってる!でも大人なサイトを見たって堂々と言えるかってーの!!…いや、ここではっきり言わないと男がすたるか…


「この前…」


俺は一呼吸ついて、続けた。


「藍のパソコンで大人なサイトを見たのは俺だっ!!!!悪いのは俺!だからもう気まずい雰囲気になんてなるな!」


い、言ってやったぜ〜…ワイルドだろ〜って○ギちゃんやってる場合か俺!


「気まずい雰囲気…?あ、はい。なんとなく知っていました」
「へ…?」


予想外の七海の反応に俺は思考が追いつかなかった。今…なんつった…?知ってる…?


「だ、だって泣いたって…」
「確かにあの時は頭が真っ白になって泣いて飛び出しちゃいましたけど…その…」


なんだ?七海のヤツ、急に頬を赤らめだしたぞ。…あぁっもう!可愛いなぁ。


「藍くんが追いかけてきてくれて、聖川様はパソコンを使わないから翔くんが見たんだろうって…」


その日の出来事を七海は思い出したのか俯いてモジモジしている。
あ、なんか嫌な予感がする…


「それに、あ、藍くんが…女性の裸で興味あるのは私だけ…と言って抱きしめてくれたんです…」
「ま、事実だしね」


ノロケきたぁあああああああああ!!!藍も何気に認めてるし…て、おい!七海の腰を抱き寄せてるんじゃねぇ!そこ!!!!しかも気まずい雰囲気のきの字もないんですけど?
…いや、藍の口から気まずいなんて言葉一言も聞いてないから俺の想い込みだったんだけどさ…ああ言われたら気まずいとか思うだろ?な?な?
つか!最初から七海にばれていたなら弁明しなくてもよかったんじゃね?俺!
俺は藍に視線を向けると…目を細めて少し笑ってやがるし!!!


「翔くんも、男の子ですから…」


何その【思春期男子だからしょうがないよね】的なニュアンス!…確かに性に興味ある思春期男子だけどさ。


「なぁ…藍…」
「何、ショウ」
「俺、こいつに言う意味あったのか…?」
「当然」
「最初からバレてたのに?」
「…ハルカに群がる余計な虫は振り払うに限るでしょ」


虫!?俺のこと虫っつったよな!?今!!!
そりゃ七海のことは好きだけどさ!虫って、ヒトですらねぇじゃん!
そういや、この前怒られた日も虫って言われたなそういえば!!!


「払っても払ってもしつこいから一苦労だよ、本当。当の本人は無意識だからさらに性質が悪い」


てことはなんだ?俺にわざわざ言わせたってことは…


「その…虫とやらを振り払うの大変だから七海が俺に対して引くように仕向けたのか…?」
「仕向けるっていう言い方は正しくないね。ハルカにはボクの憶測を言ったにしか過ぎないからショウ本人から事実を言わせただけ。…まぁ結果的にそうなったけど」
「あの、藍くん、翔くん!」


そこでふと七海が顔を上げた。


「私、虫よけスプレーならいつも持ってますよ!だから虫刺されで困ったらいつでも頼ってください」


・・・・・・・・・・。


「え?え?どうしたんですか?二人とも」
「……ね?本人無自覚でしょ?」
「こりゃ確かに…」


……藍の苦労が少しわかる気がしたぜ。


あと、俺も次の休みで自分のパソコンを本気で買おう。




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