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□藍くんと月宮先生と私(名前変換無)
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事務所で藍くんと月宮先生の間に挟まれること数分。
お互い見えない火花が散っている…どうしてこうなったんだろう…


「藍ちゃんって確かに可愛いけど、ハルちゃんとはちょーっと釣り合ってないわよね〜」
「……リンゴには関係ないことでしょ」
「おおありよーっ!だって〜アタシ、ハルちゃんの事好きになっちゃったんだもん☆」
「……」
「えぇっ!」


つ、月宮先生、今とんでもないことをさらりと言っちゃって…て、先生が私の事を好き!?
嘘でしょ?早乙女学園を卒業してからは藍くんと3人で何度かお仕事が一緒になった程度の交流しかなかったのに…。


「ねー、ハルちゃん!ハルちゃんもアタシの事好きよね〜?」


藍くんの無言の圧力を物ともしない月宮先生は私の首に腕を回して抱き着いてきた。
ちょ…っ、くるし…っていうか藍くんの視線がすごく痛い…
先生の事は好きだけど、そういう好きじゃなくて。


「何しているの、さっさと離しなよ。嫌がっているじゃない」


月宮先生から私を引き剥がそうと私の背後から腰に手を回してくる。
こ、これってまるで二人に抱きしめられているみたいでとてもドキドキする…


「ちょっと…何リンゴに抱きしめられて心拍数上昇させているの」
「うふふ、それってまんざらでもないってことよねー!」


そ、そりゃこんなきれいな人たちに抱きしめられたらドキドキするに決まってる。


「やっぱりーハルちゃんの相手は年下の男の子より、落ち着いた大人の色気があるアタシよね!」
「はぁ?リンゴに色気?リンゴとハルカじゃ女装したおじさんと、女の子にしか見えないけど」
「お、おじさん…ですって…」


月宮先生の私を抱きしめる腕にギリギリと力が入る。うぅ…く、苦しい…


「それに24歳になってもまだ女装アイドルじゃ先が知れているんじゃないの」
「あ〜ら、15歳のお子ちゃまな藍ちゃんにハルちゃんを満足させられるとは思えないけどねぇ」


私の頭の上で見えない火花が再び散っている音が…


「確かに経験不足は否めないよ。でも、それはこれから埋めていけばいいだけの話。リンゴと違ってまだまだアイドルとしても、人生も長いしね」
「そんな可愛げないこと言ってるとハルちゃんに嫌われちゃうわよ!」
「例えハルカに嫌われてもボクが好きでいるからいい」


その言葉に一瞬月宮先生の腕の力が緩んだのを藍くんは見逃さずに私を先生から引き剥がし、自分の方に私を向かせると藍くんは真正面から私を抱きしめた。
人前じゃ絶対にそんなことをしてこない藍くんの行動に私は驚いて目をパチパチさせた。


「ふぅん…あのクールな藍ちゃんがねぇ…」
「美風先輩…」
「君が例えリンゴを好きでも、ボクは君だけを好きでいるから」


藍くんの言葉にハッとした。私がはっきり答えないから月宮先生と藍くんとの間で揺らいでいると思わせてしまったかな?
だとしたらちゃんと月宮先生に返事しないと!そう思った私は藍くんの腕の中から出て、先生に向き直った。


「先生、すみません。私にとって美風先輩はかけがえのないパートナーなので、先生のお気持ちにはお答えできません」


そう言って頭を下げた。付き合っていることは周知の事実だけど、公言していないから『パートナー』という表現にしておいた。


「あ〜あ、久々の告白で振られちゃった〜!今日は龍也と朝まで飲んでやるぅ〜」


と泣く振りをしながら月宮先生は事務所を後にした。
後に残された私と藍くんの間には何とも言えない微妙な空気が流れている。
私はなんとなく藍くんの方を振り返るのが気まずくて背を向けたままでいた。


「ねぇハルカ」
「…はい」
「こっち向いて」
「え、えっと…その」


振り返りたいけど、どんな顔して振り向いたらいいのか分からずにいた。
私が動かなかったからか、藍くんが私を振り返らせて…キスをしてきた。
それは触れるだけの優しいキス。


「ハルカ、顔真っ赤」


唇を離した藍くんはクスクス笑っている。


「ボクをパートナーだとリンゴの前で言ってくれてありがとう」
「いえ、本当の事ですから…」
「で・も・さ」


グイッと藍くんに抱き寄せられ…頬をつねられた。


「どうしてリンゴに告白された時点でソレを言わなかったのかな、君は」
「いひゃ…いれす」(※痛…いです)
「そうしたらリンゴと無駄なやり取りをすることもなかったし、ボクも余計なことを言わなくて済んだ」
「すみまへ…」
「いい?次からああいう場面は即答すること。君のことを狙っている男はまだまだいるんだからね。返事は?」
「はひっ」


…って私が悪いことしたみたいな感じになってないですかね…?


「何か文句ある?」
「ないれすっ」


すみません、これからはすぐに答えるので私の頬をつねるのを辞めてください…

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