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□チョコより甘い君
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「それ、おいしいの?」


気が付くとハルカは最近それをよく飲んでいる。


「はいっ!寒い日は毎日飲んでます。体が温まるんですよ」
「へぇ…200mlあたり92キロカロリーか。決して低カロリーとは言えないね」
「で、でもとても美味しいんですよ。藍くんも飲んでみます?」


そういってハルカはマグカップをボクに差し出してきた。
カップからは湯気とともにふんわりと甘い香りが漂う飲み物…ココア。


「ボクはいいよ。冬ってただでさえ脂肪がつきやすい時期だし」
「じゃぁ、このチョコレートはどうですか?」


マグカップをテーブルに置いたハルカが次に取り出したものは冬季にしか発売されない限定チョコレート。


「あのさ…ほんの数秒前に言ったボクの言葉すら忘れたの?」
「覚えていますよ。でも、藍くんなんだか疲れた顔をしていたので…」


ボクが…疲れた顔?ロボのボクにおかしなことを言うね、君は。


「ボクにそんなことを言うのは君が初めてだよ」
「そうなんですか?ほら、疲れた時には甘いものを食べるといいって言いますから」


そう言いながらチョコの包みを開ける。


「確かに…ここ数日は分刻みのスケジュールでラボ通いはおろか、ほぼスリープ状態でのチャージだったから…
機能がいくつかフリーズしてしまっているのは事実だよ」


それが人間で言う【疲労】にあたるのかは分からないけど。


「きっと、藍くんも甘いの摂ればリラックスになりますよ。ですから、はいっ」


ボクの口元に包みから取り出したチョコを差し出す。まったく…こういうときは強引なんだから。普段からこれくらいボクに積極的でもいいと思うけどね。

そのチョコは口溶けの良さが売りで人の体温でもすぐ柔らかくなる。なのでハルカの体温でもすでに解け始めていた。。


「藍くん、溶けちゃいます」
「……」
「…食べないんですか?美味しいですよ?」
「ボクは少しでいいから、君が食べて」
「…?」


ハルカがボクの言葉の意図など特に考えることもなくチョコを口に入れた時、ボクはハルカにキスをした。


「んんっ…」


舌を割り込ませて、まだハルカの口内に残っている溶けて小さくなったチョコを舌先でかすめ取る。


「…ボクは、これで十分だよ」
「んぁっ…いく…ん…っ」


キスとキスの合間にハルカが甘くボクの名前を呼ぶ。それは口にしたチョコよりも甘い囁きで、ボクを誘惑する。


「ふ…ぅ…」
「…ねぇ、君の体はチョコのように甘いのかな。とても興味深い」


唇を離すとハルカがチョコを持っていた方の手を取り、その指に舌を這わせてみる。


「や…っ、あ、藍くん…っ」
「黙って。今測定中だよ。…君の体が甘いのかどうかをね」


測定なんて、当然嘘。だけどそう言えばハルカが黙るだろうことは予測済み。
ボクの舌の動きに合わせてハルカが小さく身を震わせている。


「よく分からないな…」
「も…いいですか…らぁ」


なぜだかハルカの反応がもっと見たくなったボクはハルカの指を口に含みゆっくり舐める。すると君は大きく反応を示して。


「藍くん…や、やだぁ…」


羞恥を感じたハルカが頬を紅潮させ、目には涙を浮かべてふるふる震えている。


「……まったく」


ボクはハルカの手を解放して、目元に浮かんでいる涙をぬぐってあげた。


「ボク達、もうちょっと先に進んでもいい頃じゃない?」
「それは……そうかも知れませんが…」
「何?」
「藍くんはいつも大人びていますけど、こういう時の藍くんは私の知らない顔になるので…怖いんです」
「怖い…?」
「…戸惑う、の方が近いかもしれません」
「君を戸惑わせるボクは嫌い?」
「まさか!」


ハルカは間髪入れずにぶんぶんと首を横に振って否定する。


「ドキドキして…どうしていいか分からないんです」
「なるほど…確かに君の心拍数はボクが触れる度急上昇している。と、いうことは」
「と、いうことは?」
「慣れれば問題ないね。その為には回数をこなすのが手っ取り早い」
「か、回数って…」
「スキンシップをたくさん取って、ハルカの鼓動が早くなくなれば次の段階に進めるというわけ」
「す、すきんしっぷ…」
「【大人の階段】というのを二人で登ろうよ。ねぇ?ハルカ」


そう言いながらボクは滅多に見せないとっておきの笑顔をハルカに向けた。




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