A

□待ち合わせ。
1ページ/1ページ

「藍くん時間にはぴったり来るはずなんだけどなぁ…」


藍くんと駅で待ち合わせをしていた私は携帯の時計を何度も見ていた。
台風で交通機関がマヒしようとも1秒たりとも待ち合わせに遅れることがない藍くんが今日はまだ来ていない。
まさか、来る途中でショートやオーバーヒートして…!?
私は急に不安になり藍くんに電話をかけた。


プルルル。あ、ワンコールで出…


【遅い。5分29秒遅刻しているよ】


藍くんが出た瞬間私怒られた!?
待って、遅れているのは藍くんの方だよ!


「私いますよ?」
【はぁ?どこに?ボクの可視範囲にはいないけど】
「北口の『駄犬ダメ公』像の前です!」
【はぁ…】


え、そこでなんでため息をつくの?!


【君が「人が少ない南口」って指定してきたんでしょ。そもそも、この待ち合わせにボクは意味がないと思っているよ。だけど君がどうしてもっていうから待ってあげているんだけど?その上周りの女性に声をかけられて非常に面倒くさい】


あ、やばい…思い出した…!北口じゃ見つけにくいからって南口にしたんだった…


「ごめんなさいっ!今行きます!すぐ行きますっ!」
【…あと3分以内に来なかったら…】
「なんとしてもいきます!」


そこから先はとにかく無我夢中で走って…どうにか3分いないにたどり着けた…はず…
藍くんは壁にもたれかかってこちらを見ている。
そして遠巻きに女性達が藍くんの事を凝視している。…そりゃこれだけ綺麗でスタイルよかったらそうなるよね。


「はぁはぁはぁ…っま、まにあっ…」
「間に合っていないから。…北口からここまで普通の一般女性が走って3分。それなのに君はどうして5分もかかっているの。足が遅いにもほどがある」
「はぁっ…はぁっ…す、すみませ…」


おかしいな…ありったけの全速力で来たんだけど…


「とにかく帰ろう。さっきから声をかけられたり周りに見られていてあまり気分いいものじゃないし」
「は、はい」


肩で息を整える私の手を取り指を絡めるように繋ぐと、藍くんは私を引っ張るように歩き出した。


「まったく…君はどうしてこうトロいのかな」
「すみません…」
「ま、ボクがこうやって手を引いてあげれば君も少しはマシになるかもね」


立ち止まり私を振り返る藍くんは一瞬だけフワリとほほ笑んだ。あぁ、その顔大好きです!


「でも今日はボクを10分以上も待たせた」
「うっ…」
「帰ったら…そうだね、どんなペナルティを課そう」
「そんな…」
「そうだ。朝までボクに抱きしめられて眠るっていうのはどう?」
「…っ!」
「ハルカの顔、真っ赤」


藍くんはそういうと私の手を引き再び歩き出した。

それはなんて甘いペナルティ。





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ