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□花火
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ヒュルルルル…ドーン…

フライングソーサーに乗って花火を見上げるアイツを見つけた。

何も言わずに自分もソーサーで近づき一緒に空を見る。


ドーン…パラパラパラ…


空を照らす花火の音が響くだけで互いに何も話さない、そんな静寂が流れる。

そこに


「なぁ、先輩」


投じられた一石。


「なんだ?」


問い返すとソイツはまた暫く黙り、


「ペコポン人ってのは、なんでこんなあっけないもんに夢中になっちまうのかね」


いつになくらしくないソイツの言葉に俺は暫く考え、


「俺はペコポン人でもなければペコポン育ちでもないからな、憶測でしか答えられんが」


ここで一息吐き


「多分、永遠なんてものはつまらないからじゃあないか?」


と思ったことを言った。


ケロン人に比べればペコポン人の一生はあっという間だ。

だからと言う訳ではないかもしれないが、彼らは儚いものに惹かれる性質(タチ)があるように思う。

ソイツは何も返さなかったが雰囲気からすると異論がある訳ではないらしい。


無言のまま時が過ぎ、打ち上げられていた花火が終わったようだ。

まだ煙の残る空を見上げながらふとソイツが呟くように言った。


「なぁ先輩、花火しようぜ」


「はっ?」


もちろん聞こえなかった訳ではない。


「花火って……今見ただろう?」

「それは打ち上げ花火。俺サマが言ったのは手持ち花火」


面白がるようにソイツは言い、


「ほら、早く帰るぜ先輩」


と言って一人で日向家に向う。


「おいっ、クルル!」


と叫び追いかけると奴は楽しげに笑い、


「ほらっ、さっさと着いてこいよ」


と言って更にスピードを上げてしまう。

追いかけながら叫んでも奴は面白げに笑うばかり。

俺はしょうがない奴だと嘆息し、




―――それでもやはり笑っていた。




 

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