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□それならイチコロ
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 クルルのラボに入った瞬間、モニターの大画面に写っていた映像に思わず苦笑がもれた


「よく飽きないでありますなぁ。」


鈍感ヘタレ赤ダルマなんか見て、という言葉は喉の奥へ追いやりつつもクルルの横まで移動して行けば、何時ものようにクックと笑ったクルルと目が合う。


「何言ってんだよ隊長、こんな面白いもん何処にもねぇよ。」


そう言ってまたモニターに視線を移す。

つられて見れば、見慣れた幼なじみの、これまた見慣れた芋を焼く姿にあぁヤバイかなと内心慌てた。

図らずも(見ていれば分かってしまうだろう)クルルの片想いを知ってしまっているケロロとしては、捻くれ者の後輩が少なくとも傷付くのではないかと思ったのである。



「あり?」

「なんだよ。」


しかし、当のクルルは見た目には至って何時も通りに見え、ケロロは首を傾げる。

そして、自分なりに配慮したつもりで

「なんとも…ない、でありますか?」

「…。」

「い、いやっ!やっぱ今の無しっ!!」


ジロリと見詰めて来たクルルに、身の危険を感じたケロロは慌てて訂正したが、勿論現状は変わらない。

切羽詰まってジリジリと後退し始めたケロロだったが、ふとクルルが笑い出した。そして、目線をモニターに戻す。


「だってよぉ…。」

「ク…クルル?」

「あんな幸せそうな顔、モニターじゃねぇと見れねぇじゃん?」


モニターの中に居るギロロは確かに幸せそうだった。

自分の好きな人の為、ひいてはその笑顔の為に芋を焼く。まるで馬鹿の一つ覚えだとしても、その人の為ならば厭わない。

ただ、目の前の黄色い彼にとっては現状を維持する事が想い人の幸せに繋がっているだけだった。

クルルの想いがいつかのタママの様に膨れ上がらないか、だなんて可笑しな心配をしつつも、ケロロの口から自然と言葉が滑り落ちた。


「本当に、好きなんでありますな…。」


そう口にすれば、珍しくもポカンと口を開けた生意気な後輩だったが、直ぐにはにかむように笑う。


「まぁな。」

「っ!…そんな顔も出来るんじゃん。」

「何がだよ。」


ボソリとしたケロロの呟きへの返答は何時ものクルルだったが、一瞬垣間見たあの笑顔は幻ではない。

普段の彼を知る者なら誰でも驚くようなその表情。愛しさとほんの少しの哀しみが入り混じったそれに、知らずケロロは嬉しくなった。


「なんでもないであります。まぁ、強いて言うなら…」





    それなら、イチコロ




今の顔を彼に見せれば良い


ただ、それだけの事。

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