CHAIN HEARTS〜心をつなぐ者〜
□紡ぐ者
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いよいよ出発の時間だ。村人たちが外の世界へと続く門の前へ集まっている。
そこでジゼルは、旅に必要な物資を村人たちから貰う。
「気をつけるんだよ」
母親が自分の心配をしてくれている。いつもは、気の強い母だが今回ばかりはそうはいかないらしい。母親の息子に対する不安と心配という名の愛情を感じる。そんな母にジゼルは笑って見せた。
「大丈夫だよ母さん。だって俺は母さんの子なんだから(笑」
ノレンはそんなジゼルの意図を察し、「もう、この子は...」と少し安心した表情を見せる。それにジゼルも安心し母と一緒に大笑いした。
「...行ってきます」
ジゼルは門の外へ出...
「ジゼル!!」
「?」
ジゼルは振り向いた。顔面に迫る何か。それをジゼルは右手で掴んだ。
「持ってお行き!母さんのお守り」
ジゼルは右手のひらに収まった“それ”を見る。ブレスレットだ。綺麗な水晶の。つまり、クリスタルである。
「いいの?」
「あぁ、お前が元気に帰ってくることを母さんは祈っているよ」
ジゼルは軽く微笑むと、踵を返し、外の世界へと走って行った。
「行ってしもうたか」
「寂しくなりますね」
村人の言葉にキセはそうじゃのう...と本当に小さな声で呟いた。
昔は本当に小さくて頼りない背中だったのに、今では大きくて頼もしい背中をしている。何も心配することはない。彼は...ジゼルは自分が思っている以上に立派に成長しているはずだから。
「自立...か。ジゼル、一人で生きていけるようになったんじゃのう」
キセ、ノレン、村人たちは既にジゼルの姿はない門の先を只、只見つめていた。