CHAIN HEARTS〜心をつなぐ者〜
□紡ぐ者
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「気づいておったよ」
キセはジゼルにそう言った。
「ごめん...」
「何故謝る?」
「...だって...村の宝なのに勝手に盗み出して...」
「謝る必要はないよ。どうせ、お前が旅立つ日にあげるつもりだったから」
「え?」
ジゼルは困惑する。あげるつもりだった?村の秘宝を俺なんかに?何で...
「その短刀はね、ジゼル。お前の父親の形見なんだよ」
「親父の...?」
突然明かされる真実にジゼルの考えが追いつかない。
「そう。只、この短刀はお前の物になるのが少し早くなっただけ。持ってお行き」
「待ってよ村長!教えてよ!親父の事...!!」
「...いずれ分かる。教えられんのじゃ。今はまだ“その時ではないから”」
ジゼルは不服そうだったが、それ以上の追求はしなかった。
「何にせよ、お前にはその短刀を扱うぐらいの力量はもう備わっているはずじゃ。3年前に盗み出したんじゃからのぅ」
「何もかもお見通しかよ」
ジゼルは苦笑する。
「当たり前じゃ。何年お前の事を面倒見てきたと思っておるんじゃ」
「うん、分かってるよ...ありがとう、村長。行って来ます」
「あぁ、行ってらっしゃい。ワシはいつもお前の帰りを待っておるよ」
キセの瞳から流れ出た涙はジゼルの胸を少しだけ締め付けた。