CHAIN HEARTS〜心をつなぐ者〜
□紡ぐ者
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「ねぇ、この村の外には何があるの?
「お前の知らないものがたっくさんあるよ。大人になったら外に出てごらん」
「僕の知らないものが沢山...」
少年は瞳をきらきらさせながら地平線の彼方を見つめていた。
それから八年後。
「ジゼル!起きなっ!!ジゼル!!」
村の隅にポツンと立てられた小さな家から威勢のよい女性の声が響き渡る。村人たちは微笑ましい顔をしながら仕事へと出かける。
「うーん...何だよ、うるせぇなぁ...」
くぁ...と欠伸をしながらジゼルは起き上がる。部屋中にコーンスープの匂いが漂っている。朝食のようだ。
「今日は晴れだよ」
母親はフンッ!と鼻息を吐いて得意げに言う。その言葉に反応したジゼルは即座に起き上がり、瞳をきらきらさせながら「マジでっ!?」と叫ぶ。
「いよっしゃぁぁぁ!!母さん!俺...」
「分かってるよ。今日にするんだろ?出発の日。」
「あぁ!」
ジゼルには夢があった。この世界の隅々までこの瞳で見てまわりたいという夢が。この村には掟で18になるまでは外に出てはいけないという決まりがあった。だから待ったのだ。この日を。
昨日が18の誕生日だったのだが生憎の雨で出発する気にはなれなかった。でも、今日は快晴だ。気持ちよく出発できる!!
「村長に挨拶してくる!!」
「えぇ、お行き」ジゼル・アーガスは満面の笑みで家を飛び出して行った。
「...ふふっ。ほんとにあの子は貴方にそっくりだよ...エディ」
ジゼルの母、ノレン・アーガスは、額縁の中で微笑む男性に目をやり、やわらかく微笑んでみせた。