テニポケ
□旅立ち
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「婆ちゃんー樹海行ってくるよー!!」
「はいはい、気を付けて行ってらっゃい」
翌日、僕は寝ている千石を置いて朝早くに家を飛び出した。
畑を耕す婆に大声で叫びながらお気に入りのセカンドバックを肩に掛け、田んぼ脇の道を走り抜ける。
この道をまっすぐ行くと、人はあまり入らないハジマリの樹海に辿り着く。
普段は静かで人気で無く野生のポケモン達が沢山住んでいるこの森は、地元の人でも時々迷うほど中が入り組んでいる。町の人以外でここに来る奴はただの物好きな馬鹿だけだ。
樹海の入り口に続く大きな竹林を通り、森の中に入る。
枝分かれしている道を右、左にひょいと抜け少し小さな開けた場所に出た。広い草群の真ん中に、デンと構える大きなオボンの木。ここは僕のお気に入りの場所だ。
僕は木の枝に足を掛けて上に登ると、枝に付いているオボンの実を取ってサイドバックに入れた。
誰も知らない僕のとっておきの場所。ある程度オボンの実を取り終わった僕は、ここでいつもと違う事に気が付いた。
「ピカチュウ達がいない」
いつもなら、この森に住んでいるピカチュウ達がこの木に集まりオボンの実を食べている筈なのに。
辺りを見てもピカチュウ達の気配は無いし、鳴き声も聞こえない。それどころか、他のポケモン達の姿も見当たらない。いくらこの森が静かだって言っても、ここまで静かなんて事は今までなかった。
「(まるで、ポケモン達が皆いなくなったみたいだ)」
何だか、嫌な予感がする。こういうのをなんて言ったかな……そう、胸騒ぎ。この間美春が顔色悪そうにして言ってたっけ。
「うわー!!助けてー!!」
その時、遠くの方で男の子の叫び声が森にこだました。
方向からして、多分貯水池だ。
僕は木の上から飛び降りると、急いで森の中心へと走った。
「(あの気の抜けたような声、もしかして……!!)」
頭によぎるアイツの顔を思い出し、僕はペースを上げる。暫くすると、前の方から水音が聞こえてきた。
目の前に大きな池が現れる。陸との境目が無く、下から絶えず水が湧き出ている。
ここは昔、トーホク地方一帯の水道水を賄う為に作られた貯水池の跡地だ。今はもう使われていないために元あった建物は錆びれ、半分以上が水に浸かっている。外からみたら湖に城が沈んでいるようだ。
「助けてー!!」
声のする方を見ると、木の上で落ちないよう枝を掴んでいる秀がいた。
「秀!!お前何やってんだよ!?」
「チーゴの実を取りに木の上に登ったら、降りられなくなったんだよ〜!!」
枝がしなり今にも池に落ちそうになる秀。僕は慌てて枝の先端を引っ張り勢いよく手を放した。掴まっていた秀が真後ろの草群に落ちる。
「わぁっ!?」
ガサガサッ
間の抜けたような声を出しながら落ちた秀は、尻をさすりながら草群の中から出てきた。