テニポケ
□それぞれの日常
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この世界に住む不思議な生き物、ポケットモンスター。略してポケモン。
彼らは人々と共存し、時には対立しながら繁栄してきた。
そして、現在も……
◇プロローグ それぞれの日常◇
春麗らかなるトーホク地方。様々な地方のポケモンが混在する珍しい土地であるここは、他の地方から沢山の人々が訪れる往来が盛んだ。
例年沢山のポケモントレーナーが旅立ち、他の地方で有名になった者も少なくない。
そして、今年も沢山のポケモントレーナーが誕生していた。
「それじゃあ、この中から好きな子を選んで」
「わぁ!!いっぱいいるでヤンス!!」
「へっへーん俺はこいつだ!!」
ここはジョウショウタウン。トーホク地方屈指の施設数を誇る主要都市の一つだ。昔ながらの街並みが続く通りに、一つの研究所があった。
柳研究所、若くして博士号を取得した秀才柳蓮二が開設した研究所だ。ジョウショウタウンの出身ということもあってか、開設して間もないにもかかわらず訪れる者は後を絶たない。
「美春、どうだ?様子は」
「大丈夫、どの子も落ち着いてるし相性も悪くないみたい」
美春と呼ばれた少女はモンスターボールを持った少年達を見ながら柳に言った。彼女の名前は斉雅美春。柳の実の妹であり優秀な助手だ。
どうして苗字が違うのかというと、両親が結婚した際、苗字は互いのままにした方が仕事の関係上都合が良かったのだ。そして子にも自分で苗字を選ばせた結果、蓮二は母方の苗字である柳を、美春は父方の苗字である斉雅を名乗っているのである。
「二人共選んだね?それじゃあモンスターボールからポケモンを出して見て」
斉雅は少年達に笑いかけながら言った。少年達は元気良く返事をすると、ボールを眺めた。どうやらボールからの出し方が分からないらしい。それに気付いた斉雅は、徐に自分のベルトに付けいたモンスターボールを一つ取り出した。
少年達がその様子を見守る。
「まず真ん中のボタンを一回押すの。そうするとボールが手のひらサイズになるよ。君達のボールはもう押した状態になってるから、そのまま自分の前方向にボールを投げる。人や物に当てないように気をつけてね」
斉雅はモンスターボールを見せて真ん中のボタンを押して見せながら説明した。
「おいで、テテ」
斉雅がボールを投げると、中から白い光と一緒に、一匹のポケモンが出てきた。
「すごいでヤンス!!出てきたでヤンス!!」
「この子はネイティのテテ。俺の手持ちポケモンだよ」
モンスターボールから飛び出したテテは、少年達の頭の上を数回旋回した後、斉雅の頭の上に留まった。
「すげー!!よし、俺もうりゃあ!!」
少年がボールを投げると、中から勢い良くヒトカゲが出てきた。ヒトカゲは辺りを見回して吠えると、口から小さく火を出した。
「その子は炎タイプのヒトカゲ。さっき柳博士から貰ったポケモン図鑑で情報を見ることが出来るよ」
「サンキュー!!こいつでジムリーダーの真田ブッ倒してやる!!」
少年は息巻いてそういうと、パートナーのヒトカゲを連れて勢い良く研究所を出て行った。
その場にいた全員が狐に摘まれたような顔で、研究所の入り口を見つめた。