禁じられた思い出
□永久なる願い
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長閑な日には、外に出たいと思う――。
そんな事をふと思った。
「……外、か…」
何故急に外に出掛けたくなったのか、それは判らない。それでも今きっと外に出なきゃいけない…そんな気がしていた。
――…どうしたものかね?
一応考えてみるが、結局のところ外出する気満々なんだけど…。一応は考える素振りを見せてみる。
「――ふふ♪さぁて、今日は何か善い事ありそうだな…」
******
長閑な日に森の中へと出掛けるのは、何かと善いものだとそう思える位この日は僕にとって、心安らげるものだった。
「う〜〜んっ!!気持ちいい位静かだね♪」
大きく伸びをし、辺りを見回した。
そよそよと風に揺れる草木に花々――。
「……これは最高だね」
そのまま風に髪を遊ばせ、道行くままに突き進んで行く。
多分…この時には既に何かに惹かれていたのだろう。
少し行くと、大きな湖に出た。
美しく煌めく水面に、太陽が反射して神々しいまでの光りを放っていた。
「――…へぇ…。こんな森にこんなに美しい場所があったなんて…知らなかったなぁ…」
歓声を上げる僕の耳に、小さな水音が聴こえた。
「?」
僕はゆっくりと音のした方に視線を向けると、そこには湖に浮かぶ一人の少女がいた。
僕は、我が目を疑った。
何せ、人が湖に浮かんでいるんだ…。こんな有り得ない光景を目の当たりにしたら誰だって言葉を失う。
「――っ?!」
――彼女は一体…そんな事より、何時の間にあそこに…?
驚愕の目を向ける僕に気付いた少女は、静かに此方を振り向いた。
そして――…
「――綺麗だね…」
小さな鈴の音のような声色で、そう話し掛けられた。
「――…美しいのに…儚いね…」
少女はどこか寂しそうに空を見上げて言った。その姿を見ていると、もっと彼女の事が知りたくなり、その声をもっと聴きたくなった。
「……そうだね」
短く返した僕の方へ顔を向けると、少女はにこっと笑った。
「――っ!」
ハッと息を呑む僕にゆっくりと近付く少女から、僕は視線を逸らすことができなかった。
その間にも、少女は着々と僕に近付いていた―――……。
「――こんにちは」
再度掛けられた少女の声に、ハッと我に返った僕の喉からは掠れた声が出た。
「――っこん、にちは…」
これが精一杯だった。
そんな僕をただ黙って眺めている少女と目が合った。
「………」
――…可愛い…。
第一印象がそれ。
僕は上から下まで彼女を見た。
彼女はゆっくりと地に足を着けると、にこやかに笑い、そのさくらんぼみたいにふっくらとした小さな唇を開いた。
「…お兄さん…名前は?」
「…ぇ?…ぁ、り…のん…」
「リノン?…そう。僕は…朱華」
「しゅ…か…?」
「うん」
珍しく吃る僕に、彼女はにこにこ笑っていた。その無邪気な笑顔に、僕は少しずつ冷静になっていく。そんな僕を見て、朱華は小さくほくそ笑んだ。
「…少し…お話しませんか?」
彼女の提案に頷いた。
僕達はその場に腰を下ろし、他愛もない話で盛り上がった。