禁じられた思い出

□情緒不安定な恋愛
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コレは‥とある町の双子の兄弟の話――‥。


†冷たい現実†



静かな夜。
その静寂をかき消す様な位の、其れは其れは‥‥甘く‥其れでいてとても切な気な叫び声だった。



「‥‥んっ‥‥やぁ!ふっ‥‥ひゃあっ!!シ‥‥シリスっ!‥‥お願っ!もぉ‥‥止めてぇ‥‥っ!」


『シリス』と呼ばれた少年は、自分と同じ顔をした片割れの耳に口を近付けた。

そしてそのまま‥‥‥。


『止めてやる訳無いだろ?‥‥第一‥シオンは…僕のモノだし』


其れは甘く、それでいて残酷な言葉だった‥。

「!‥‥ぉ‥お願っ!もぉ‥止めてっ!」


怯え続けるシリスの片割れシオンは泣きながら許しを乞い続けた。
しかし、そんな事で許さないのがシリスだった。


『どうして?どうして止めなければいけないの?』


シリスはクスクス…と笑った。
そんな愉しげなシリスをただ怯えながら見つめる事しか出来ないシオンは、シリスに再度問掛けた。


「っ!‥‥シ‥‥リスは‥どうして“こんな事”を‥するの?‥僕が‥何かしたのなら、謝るからっ!」


シオンの必死の叫びにも動じないシリス。
シリスは、小さく首を傾げた。

『こんな事?‥あぁ‥シオンを抱くのか?って事でしょ?』

「っ///」

『‥‥‥シオンは僕の事、どう思ってる?』

「どう‥って‥‥」

シオンは、シリスの突然の質問に困惑した。


『好きか嫌いか』

「えっ!//‥‥僕は‥‥シリスの事は、双子の片割れで‥‥僕の大切な家族‥‥だよ‥?」


『――違う。お前の考えてる事と僕の考えてる事‥、全然違う』

幼すぎるシオンには、シリスの言っている言葉の意味が理解出来なかった。
自分を酷く犯し、自由すら奪おうとするシリス。そんなシリスの思惑なんか理解できる筈がなかった。

「‥‥シリス?」

不安と恐怖で声が震え、ただ微動だにしない自分と同じ顔の半身を凝視した。


二人の間に短い沈黙が流れ、どちらも動かなかった。否、シオンは動けなかった――。




「…っ‥、シ、リス‥?」



ベッドに仰向けに寝かされていたシオンは、自分を見下ろす半身を涙が滲む視界で捉えた。『熱い想い』なんて意味じゃなく、それは、『恐怖』から視線を反らせずにいた。

次はシリスからどんなコトをされるのか、何を言われ、どんな要求をされるのか…。




「…ねぇ、――お前は誰のモノ?」


全てが凍てつく程…、その問い掛ける声は冷たく地を這うかの様だった。切れ長の瞳に見下ろされ、呼吸が上手く出来ない程に、彼――シリスに恐怖した…。

有無を言わせぬ迫力に、シオンは涙と共に…、小さく呟いた――。


「――っ…!ぁ‥、ぼく…は‥ッ、シリス…の‥モノ……」


悪魔と契約。シオンは心の底から、自分の目の前に居る半身に恐怖した。そして、自分の未来に絶望し、この先に待ち受ける自身の役割みたいなものを思い、また涙を流す。


「…っ、ふ‥ぅえっ‥」


嗚咽と鼻を啜る音が部屋に響いた。シリスは、そんなシオンを見据えほくそ笑んだ。



シリスは片手でシオンの細腕を掴み、シオンの頭上で抑え込むと、紐の代わりに自分の腰帯を解き、縛り上げた。


「!?ゃ‥、‥シリスっ!止めて…!ほどいてっ!」

『駄目。抵抗されるの面倒』


キッパリ切り捨てると、シオンの瞳は見開き、続いて哀しみにきつく閉じられた…。
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