GS長編

□二人で歩く未来
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30分後戻ってきた新八は、割烹着・頭巾・箒という『おかん装備』をして現れた。

「あなたはそこの薄汚いソファで座っていてください。テレビ見るなり雑誌読むなり好きにしていいですから、邪魔しないでくださいね」

薄汚いって…俺のソファなんですけど…。
ニコニコ笑う新八の背後には、死神のような般若のような影が見えたので、俺は大人しく少年マンガを読むことに決めた。
あの姉にして、この弟ありだな…。

新八はどこから引っ張り出したのか、雑巾とバケツも用意して、有無を言わさず万事屋の掃除を始めた。
みるみる内に綺麗になっていく室内は、なんだか居心地悪くて知らないお宅にお邪魔しているような気分になってくる。

一応応接間としている部屋を掃除し終わった後も台所・トイレ・風呂・玄関と移動しながら掃除していく光景だけをボーッと見ていると、まるで新八が魔法でもかけながら歩いてんじゃねぇかと思う。

「坂田さん、和室に布団が敷いてあるんでけど、ここ寝室ですか?」
「おう」
「あの…寝室は自分で掃除してくださいね」

別に最初から掃除なんて頼んでないし。
でも人間って不思議なもので、塵一つなく光っている床や物を見てると、見慣れた襖の向こうに広がるカビ臭い布団と散らかったゴミを想像するだけでちょっと嫌になる。

「いいよ。面倒くさいから、新八やっといて」
「…いいんですか?」

ここまで勝手に掃除しておいて、今更良いもクソもない。

「それ、お前の万事屋での初仕事ね」
「はいっ!!」

何が嬉しいのか、さっきまで怒っていたくせに嬉々として和室の掃除を始めた新八。
何か変な鼻唄まで始まっちゃったよ。
なんだよ、その唄。変なメロディーだな。

「坂田さん、この臭い布団も干しちゃいますよ?」

臭いってカビだよね?体臭じゃないよね?
俺の心配を他所に、布団を担いでベランダへと歩を進めていく様子はまるでお母さんで、やっぱり新八はおかんスキルが高いと思う。
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