GS長編
□二人で歩く未来
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新八の姉ちゃんの為か、新八の為か、俺は俺の思うままに愛刀を振り回していた。
「あっ、姉上!大丈夫ですか?怪我はないですか?」
「大丈夫よ新ちゃん。こんな危険な目に遭わせちゃって、ゴメンね」
「いえ…僕一人の力じゃ何も出来ませんでした…」
姉ちゃんを取り戻した新八は、暗い顔をして座り込んでいた。
これで借金がチャラになった訳でもねぇし、また同じことがある可能性だってあるし、笑って一件落着って訳にゃいかねぇか。
別に新八の笑う顔見たさに動いたわけじゃねぇけど…。
ほら、あそこの姉ちゃん怖ぇし、あいつん家の食材でケーキ作っちゃったから食費代わりっていうか。
だから、まぁ、こっから先は家庭の事情ってやつだからね、俺はこれでさよならしますか。
もう本当にこれで会うことはないだろうけど、元気でやれよ…新八。
「じゃ、俺はこれで…」
「おまっ…警察官とパトカーボロボロにしといて、何を格好つけて帰ろうとしてんだ!!」
「つけてんじゃねぇ、ついちゃうんだよ!何せ俺格好いいから。あいつの前ではヒーローだから」
「気持ち悪っ!!とりあえず署まで来てもらおうか」
「待って!待ってください!!」
別で到着したパトカーに押し込まれそうになった時、新八がこっちの方に駆けて来た。
手をブンブン横に振り回しながら、走る新八の顔にはあの苦々しい泣き顔はもう見えなかった。
良かった。
「ちゃんと警察にいきますから、その人に乱暴しないであげてください」
「新八…」
姉ちゃんを送り届けるように警察に頼んだ後、俺の隣に乗り込んできた。
「お前、どうしたんだよ?姉ちゃんのことはもう大丈夫だろ?」
「僕決めたんです。あなたの近くにいようって…」
まっすぐ前を向いて話した新八の真意は分からなかったけれど、そのプロポーズのような言葉に俺は驚いて何も言えなかった。
「あ〜疲れた。長ぇんだよ、ったく」
「あなたが大人しくしてればもっと早く終わったと思いますよ?」
長い取調べが終わった後も、パトカーの中での言葉通り新八は俺に付いて万事屋に来た。
「ここが万事屋ですか〜」
「おう、汚ぇけどまぁ入れば?」
ブーツを脱いで勝手知った室内に入っていく。
廊下を数歩歩いて、なかなか中に入ってこない新八を振り返ると、新八は呆然と玄関にも入らず立ち尽くしていた。
「おい、何してんだ?」
「き…汚ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
全力で叫んだかと思えば、草履も脱がずにそのまま入ってきた。
「おいおい、玄関で靴くらい脱げよな」
「ここは路上…ここはゴミ捨て場…」
聞こえないくらいの音量でぶつぶつ呟きながら、室内をうろうろと歩き回る新八。
「何だよこの家。掃除機も箒も何もないじゃないですか!!」
「だって必要ないし」
「必要ですよ!ちょっと待っててください!!」
そう言ったかと思えば、俺を置いてけぼりのまま猛ダッシュで外へと飛び出していった。