GS長編

□二人で歩く未来
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「レジ打ちなんてチンパンジーでも出来るよ!!」

今日も今日とて新八は店長に怒られていた。
1年経っても新八は何も出来ないダメバイトで、今日も俺にいちごパフェとチョコレートパフェを間違えて持ってきやがった。
まぁ、あのくりくりの目で

「これは僕が作ったんです。初めて上手に作れたものなんですよ」

なんて言われりゃ、この際お前が作ったものならどっちでもいいやなんて気持ちになるのも仕方ないだろ?

その柔らかそうな生クリームの天辺をスプーンで一口掬って口に入れると、脳が蕩けるくらい甘くて、俺の頬は自然と緩んだ。
店員は可愛いし、パフェは美味いし、これが手に入るなら多少の獣臭さと鳴声は諦めるしかない。
次の一口を掬おうとパフェにスプーンを刺した瞬間、俺の目の前に堂々と立っていたパフェが吹っ飛んだ。

………吹っ飛んだ。

正面にはギャーギャーギャーギャー騒いでいる動物共。
床には跪く新八。
おい、おいおいおいおい。何だコレ、何だこの状況、このクソ共が!!

「見ろコレ…俺のパフェがお前コレ・・・まるまるこぼれちゃったじゃねーか!!」

頭に血が上れば、あとはもう思うままに暴れるだけよ。
ひとしきり暴れた時にふと新八を探せば、新八は目を点にして俺を見ていた。

おっ!!見たことない表情v
なんて浮かれることは出来なくて、店長と客殴ったりして怒られると思い、そそくさと逃げることにした。

汚れた木刀はいらないんで、新八に男の勲章としてあげることにして・・・。



「おいィィィィ!!」

もう店もぐちゃぐちゃにしちゃったし、結局新八には顔覚えてもらえなかったし、そろそろ潮時かなと考えながら原チャリを走らせていれば、奇跡が起きた。
あのもう二度と会えないと思っていた新八が俺を追いかけてきてくれた。
しかも追いかけて・・・ってことは俺のことも覚えてくれたって事?
マジか!!奇跡だよおい!!

新八はピーピー言ってるけど、何言ってても可愛いもんだ。
こちとら1年以上お前を見てきたんだぞ。

・・・・・・・・・・・どんだけ喋んだよ。お前結構口数多いのね。
俺いくら可愛くてもうるさい奴って苦手なんだよなぁ。

「あら?新ちゃん?」

あまりにも新八がうるさいから黙らせようとしていたら、自動ドアから新八そっくりな女が出てきた。
大人しそうだし、そっくりならコッチの姉ちゃんでいいんじゃねぇか。
って思う間もないまま、姉ちゃんは新八をタコ殴りにし始めた。

イヤッ!!ダメッ!!ムリッ!!何この姉ちゃん怖すぎるんだけど!!
笑いながら怒ってるんだけどォォォォォォォ!!



新八の姉ちゃんに引きずられるように連れてこられた実家は立派な道場だった。
俺までタコ殴りにあった後、家庭の事情とやらを話し出した。
おいおい、そんな身の内話を見ず知らずの俺に話していいのか?

ワーワー揉めている内に、父ちゃんが借金してるとか何とかで姉ちゃんが変な坊ちゃんに連れて行かれた。
姉ちゃんを悲しそうな諦めたような目で見送った新八は、延々と振り切るように竹刀を振っていた。

「ケーキ分けてやるからよ、ちょっと落ち着けや」
「いりませんよ、そんなデカいケーキ」

コイツは俺が糖を分けるってことの有難さに気付いちゃいねぇ。
やっと座った新八はもうどうでもいいと、父ちゃんも姉ちゃんも道場もどうでもいいと眉間に皺を寄せる。
俺にはお前の気持に共感してやることは出来ねぇよ。
でもよ・・・

「そこに護りてぇもんがあるなら剣を抜きゃいい」

お前を少しくらい助けることなら出来るかもよ。

姉ちゃんを助けたいと泣く新八は、あの日最初に見た時よりも汚い泣き顔で、でも俺の足を動かすには充分に効果があった。
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