銀月短編

□墓参の煙
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「アンタ、あの娘に訊いてみてくれないかい?」
ある日の午後、万事屋で銀時はお登勢にそう切り出された。
「あの娘?」
「ほら、吉原の」
「ああ、月詠か」
「そうそう」
銀時は、不審げにお登勢の顔を見た。
「吉原で働くには年を取りすぎじゃねーか?まあ、あそこは、特殊な専門店も多いけどよ」
「誰が特殊な専門店だ?!ああーん?!人の話を聞きな!このトウヘンボク!」
ズバーンと一発、制裁を受けた。
年の割にはまあまあいいパンチである。
だが、出会ったころに比べりゃ、威力は落ちた。
銀時の心にスッと隙間風が吹く。
妖怪みたいなババアだが、確実に年は取っていっている。
「もうすぐ、あの人の命日だからね。煙草の葉、供えてやりたいのさ。線香代わりにね」
「そりゃ、粋なこった」
ああ、なるほど。
もうすぐ、辰五郎の命日か。
銀時はチラリとカレンダーに目をやった。
「最近じゃ、刻み煙草なんてほとんど見かけないだろ?」
「確かにな」
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