銀月短編

□群雲
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聞き間違いかと思った。
けれど、月詠は確かにそう言った。
誰に聞かせるともなく。
…もう、疲れんしたなあ。
と夜空を見上げてそう言った。

年末恒例の忘年会に遅れて顔を出した月詠は盛り上がる銀時たちの姿を認めて、苦笑した。
まさに宴もたけなわ。
銀時の周りには騒々しくもいつもの面々が集まってかしましい。
遅れてやって来た月詠は、どことなく疎外感を感じて、戸口に近い座布団の上に腰を下ろした。
年末の忙しさの為か、身体に心に重い疲労感を感じる。
挨拶くらい行くべきだと分かっているが、それすら億劫で、月詠は煙管を取り出して火を付けた。
人の輪の中に居る銀時と一人ポツンと座る自分があまりにも遠く感じて、月詠はその輪から目を背けた。
面倒じゃなあ。
何もかも。
輪の中に入ることは難しいことではないだろう。
顔見知りばかりだ。
神楽、新八、お妙殿、お登勢殿、猿飛、九兵衛殿、たま殿、キャサリン殿、長谷川殿…。
入っていけば、笑顔で答えてくれるだろう。
分かってはいたが、月詠の足は止まったままだった。
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