銀月短編

□鐘ふたつ【後篇】
2ページ/11ページ

沖田はぶらりと気楽な調子でその足を『あの男』の住む場所へと向けた。
しかし、歩き出してほんの数分で沖田は目的地を変更することになった。
「あっ、沖田さん」
「あっ、クソサド」
万事屋の二人組にばったり会ったからだった。
挨拶代わりの神楽との遣り取りもそこそこに切り上げ、「旦那は?」と尋ねると、二人は顔を見合わせた。
「銀ちゃんなら、あれからずっと吉原にいるヨ」
「吉原に居続けたァ、豪気なことじゃねェか」
「アホか。馬鹿サド。銀ちゃんにそんな金があるわけないアル」
いつもの習慣で睨みあい始めた二人に新八が割って入った。
「ひのや、ですよ。月詠さんのところ」
「月詠っていやァ、あの別嬪の姐さんか」
そうそうと二人が頷いた。
「へえ、デキてたんだ。あの二人」
これはいいことを聞いた。
沖田はほくそ笑んだ。
「デキてるっていうか、デキてないっていうか」
「おい、なんだそのはっきりしねー返事は?」
「分かるっていうか、分かんないっていうか」
「はあ?」
「とにかく自分で見て来た方が早いです」
「そうアル」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ