銀月短編

□蝉は叫べど
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ころん。
まさにそんな擬態語が聞こえてくるかのように月詠は眠っていた。
よりによって、銀時の他は誰もいない万事屋のソファーの上で。
思わず手に持った麦茶のグラスを取り落としそうになり、銀時はあせった。
ほんの僅かな間だった。
とりあえず、帰って来ない月詠を心配しているであろう日輪に電話を入れ(実際は全く心配していなかったが)、盛大にからかわれた後、いささかゲンナリして電話を切り、冷蔵庫から取り出した茶を入れているほんの僅かな間。
普通、寝るかー!
銀時は叫び出したい衝動をグッと堪えた。
身体をくの字に折り曲げ、月詠はすやすやと寝息を立てていた。
扇風機が作り出す風がそよそよと月詠の髪を弄んでいる。
安心しすぎでしょう?
ねえ、俺の立場は?!
おまけになんでご丁寧にもスリット側を上にして眠ってんの?
おかしくね?
銀時は腹の底から沸いて出てきたかのようなため息を一つついた。
テーブルに麦茶を置くと月詠の足元のスペースに銀時は腰掛けた。
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