銀月短編

□Melancolia(AnswerB)
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賭け事の長っ尻ほど、愚かなことはない。
ツキがないとみれば、さっさと降りるのが常套だ。
アホか、俺は。
銀時はパチンコ屋の軒先で、降りしきる11月の雨に嘆息した。
湿度に敏感な己の髪が雨の到来を予言していたというのに、傘を持って出なかった自分が悪い。
いや、そもそも素寒貧になるまで、熱くなっていた自分が悪い。
自動ドアが開閉を繰り返す度、中の喧騒が銀時の耳に途切れ途切れに伝わってくる。
さっきまであんなに熱くなっていたのが嘘のように、銀時はその喧騒を醒めた気分で聞いていた。
11月の雨は性質が悪い。
一度、降り出せばそれこそ、明日もあさっても降り続くようなそんな気分にさせられる。
冬とは違って、なまじ、身を切るような過酷さがない分、耐えられるのがまた悪い。
足元から気付かないうちに忍びよってくる湿った憂鬱な冷気に、銀時は身を震わせた。
性悪な女みてぇなもんだ。
銀時は薄く嗤った。
粘着質でその上、湿っぽくて冷たくて、けど耐えられないというほどでもないから我慢してると、気付かぬうちに自分の中まで侵される。
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