銀月短編

□他人の恋路は他人事だからこそ面白いものである
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行かねばならぬ。
月詠は決意を固めた。
放り捨てて置く訳にはいかなかった。
真選組屯所の前で月詠はぐっと拳に力を入れた。
念のため言っておくが、討ち入りに行くわけではない。
事の起こりは数日前のホストクラブ高天原での例の騒動であった。
死神太夫(酒乱モード)が降臨した月詠は、あろうことか銀時はともかくとして、新八とこの真選組の鬼の副長土方十四郎にまでクナイを投げつけた。
正気に返った後、いたく反省した月詠は、先ほどまで志村邸を訪れ新八に謝罪していた。
もちろん、人の良い新八は、気にしないで下さいとあっさり許してくれたが。
そして、次に、土方に謝罪すべく屯所を訪れたという訳であった。
銀時は慣れてるからいいとしても、わっちは何ということをしてしまったんじゃ。
銀時本人が聞いたら怒り出しそうなことを思いつつ月詠はため息をついた。
先ほどから、月詠のことが気になってしかたないらしい門番の隊士に月詠は思い切って来意を告げた。
「副長の土方殿に面会をしたいのじゃが」
「ふ、副長ですか!?は、はい!いらっしゃる筈です!」
鼻息も荒くガチガチになっている隊士に月詠は首を傾げた。
何を緊張しておるんじゃろう?
「わっちは吉原の自警団、百華の頭領、月詠という者でありんす」
「よ、吉原ぁ?!少々、ここでお待ち下さい!」
泡を食った風で走り出した隊士の背を見ながらますます困惑を深める。
『自警団、百華の頭領』という言葉が完全にスルーされたことも、屯所内部で『副長馴染みの吉原の美女が乗り込んできた』というデマがあっという間に流れたことも知らず、月詠は所在なげに立ち尽くしていた。
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