銀月短編

□満干エレジー
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遅すぎる。
銀時のイライラは最早、最高潮に達しつつあった。
高潮警報発令。緊急避難勧告発動!
音にならないサイレンが聞こえてくるようだ。
新八は神楽と目を合わせると、互いにため息をついた。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
「ああ?誰が心配してるってぇ?」
「そうアルよ。心配いらないネ。ちょっと、屯所で話し込んでいるだけアルネ。マヨと!」
「か、神楽ちゃん!」
『マヨと』をことさら強調して言った神楽に新八が青ざめた。
「か〜ぐ〜ら〜。何が言いたいのかな?」
「ホントのこと言っただけアルよ〜」
にまにま笑う神楽を銀時は憎々しげに睨んだ。
そもそも、何してんだ!アイツは!
何もかもアイツが悪い。
昼過ぎに月詠が珍しく電話をかけてきた。
さつまいもが大量にあるからいらないか?
そう言って、緊張しているのか妙に硬い声で聞いてきた。
もちろん、喰いもんなら大歓迎である。
そう答えるとほっとしたような息を漏らした。
硬い声とその息の対比が妙に甘く耳に響いて、にまにまと笑った途端、今度はイラッとさせられる一言を月詠はのたまって電話を切った。
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