銀月長編

□蝶よ花よ―後編―
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ごみごみした街中よりも、月詠は公園を好いていた。
一通りの遊具は経験済みだ。滑り台から滑り降りて、下ではらはらして待っていた銀時に見事な蹴りを入れるというお約束も、水飲み場でびしゃびしゃになるのも(帰ってから新八に、月詠が風邪を引いたらどうするんだとえらく叱られた)経験済みだ。
季節の花を見るのも月詠といっしょだとまた楽しい。
つつじの蜜を吸って、目を零れそうなほど見開き、「甘いぞ!」と興奮していた月詠の可愛さといったら、と銀時は思い出し笑いをしてふと気付く。
いつから、月詠は居たのか、本当にそんなことはあったのか。
美しいけれど狂った世界の真ん中で、銀時は途方に暮れたような顔を見せると、秋晴れの青空を見上げた。
自分を呼ぶ声が聞こえた気がして、何かを思い出しそうな気配にぶるりと身が震える。
「どうした?銀時」
様子のおかしい銀時に月詠が心もとな気な顔をして見上げてくる。
「なんでもねェよ」
頭を撫ぜてやると、安堵でくしゃっと頬が緩んだ。

「あ〜旦那ァ。そのちっこいのが噂の隠し子ですかい?」
公園の入り口で嫌な奴らと鉢合わせをして銀時は、顔を顰めた。
いつものようにサボタージュを決め込んでいたらしい沖田と、それを連れ帰りにきたと思しき土方が銀時と月詠の姿を認めて、にやにやしながら近付いてくる。
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