銀月長編

□蝶よ花よ―後編―
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「散歩いってくらァ」
ひょいと月詠を抱きかかえ、銀時は新八と神楽にそう告げた。
「誘拐犯に間違われないよう気をつけるアルよ」
「変質者もですよ」
いつもの失礼な見送りの言葉に悪態をついてから、銀時は月詠を連れて外へ出る。
月詠は散歩が好きだ。銀時の腕に収まったままだから、厳密には散歩という訳ではないかもしれないが。
珍しいものを見つけると、あれはなんじゃ?これはなんじゃ?とかしましく、落っことすのではなかと銀時をヒヤヒヤさせる。

「おや、散歩かい?」
下でお登勢と会った。話しかけるのは銀時でなくて、銀時の腕に抱きかかえられた月詠の方だ。
月詠が嬉しげに挨拶をするのに目を細めて「父親に似ず、礼儀正しい子だよ」とお登勢は笑った。
「誰が父親だ!」
「じゃあ、誘拐犯か変質者だ」
ここでも誘拐犯・変質者扱いされて銀時は憮然とする。
きゅうと自分の襟元を掴む小さな手に力が入ったのが分かって銀時は目線を下ろした。
腕の中からえらく真剣な目をして月詠がこちらを見上げている。
「のう、銀時」
「なんだ?」
「銀時は、その、わっちの、父さまなのか?!」
「……違います」
「そ、そうか」
がっくりと肩を落とす銀時の姿にお登勢が腹を抱えて笑い出した。
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