銀月長編

□蝶よ花よ―前編―
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少し、話をしようか?
誰にも話したことのねェ話だ。

迷っても、逃げても、隠れても。
どれもやっぱり未来に続く道だったっていう。
そんな話だ。

ちょっとだけ。
付き合ってくれや。

『蝶よ花よ』

目を開ければいつもの万事屋の染みだらけの天井だった。
酷い、とてつもない悪い夢を見ていた気がして銀時は茫洋とした目で天井をぼんやりと見つめる。
悪い夢だと分かっているなら、思い出そうとする必要はない。
それは、自分を守るために身に付いた習慣だった。
居間からはすでに起きだしている神楽と新八の声が聞こえてくる。
今日は何故かその声が遠い。どこか薄皮を一枚隔てたように感じる。

起きるか。

ぐずぐず布団に包まっていてもどうしようもない。
起き上がって、戸を開けて、いつもの顔を見れば、世界は自分に近付く。

銀時が、半身を起こそうと同時に、衝撃が万事屋の安普請の建物を襲った。
バリ、バリ、バリッ。
さっきまで見上げていた天井が衝撃とともに轟音を上げて裂ける。

「なんだ?!」

またドMか?!それとも坂本のバカか?!
一瞬の間に過去のおさらいをした銀時の目に映ったのは、落ちてくる小さな背中と金色の扇のようにフワリと広がった頭だった。
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