銀月長編

□焦燥迷路
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選ばれることのなかったもう一つの道を見たのだと思った。

焦燥迷路

「すげぇ人出だな〜」
猪口の酒を口に含みつつ、銀時は眼下の吉原の大通りの様子を見下していた。
今日は、吉原桃源郷あげてのイベントが行われている。
日輪から誘いを受けた万事屋一行は吉原の目抜き通りを見下す料亭の二階で人ごみでごった返す吉原を眺めていた。
「そりゃ、そうだよ!なんてったって、吉原桃源郷を代表する人気遊女五人による花魁道中だからね。こんな日でもなけりゃ、見れないよ!」
晴太が嬉しそうな声を上げた。
「人ごみに揉まれることもなく見物できるのは有難いですね。こんないい座敷取ってもらって日輪さんに感謝しなきゃ」
「新八〜。筆おろしもまだなのに花魁道中なんて見てどうするアルか」
「神楽ちゃん!女の子がそんな言葉使っちゃいけません!っていうかどこでそんな言葉おぼえてくんの?」
このイベントの実行委員長を務めるのはもちろん吉原桃源郷の太陽と称される日輪である。よってこの座敷にもその姿はなく、銀時たちがやってきてすぐ、挨拶に立ち寄っただけであった。もちろん日輪の手配りにより、酒も食事もふんだんに用意されていた(神楽の胃袋も計算されているのは流石である)。日頃、飲むことなどできない銘酒に猪口を持つ手が止まらない。
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