銀月短編3

□半熟時代【前編】
2ページ/6ページ

いやー、参ったわと自称5年後の「坂田銀時」はいささかも参ってはいない口調でそう言って、ことの顛末を喋り出した。
「あの時と同じだよ」
「あの時?」
「マヨと体が入れ替わった時」
「おい、まさか…」
脳裏にイヤーな予感が駆け巡った。
「トラックに跳ねられちゃいましたァ!助手席に源外のじーさんが座っているのがチラッと見えましたァァ!!!」
「アホか!!テメー!!これで、何度目だ!?迂闊にも程がある!!って「俺」か!?俺なのか?!この莫迦もやっぱり「俺」なのか?!俺が莫迦なのか?!この莫迦が俺なのか?!俺もやっぱり莫迦なのか?!……ああ、もう訳分からん!」
「まあ、落ち着けよ。俺」
哀れみを湛えた目で5年後の俺が言った。落ち着いてられるか?!これが!!
「そうですよ。トラックに跳ねられたのは、銀さんの自己責任としても、5年前に飛ばされたのは、源外さんの責任で、銀さんは巻き込まれただけですし、銀さんが怒っても仕様がないじゃないですか」
「あの爺さん、今度は何をやらかしたんだ…」
「知るか。知る前に飛ばされた」
「テメー、何落ち着いてやがる!!のうのうと俺の朝飯を食ってる場合か!5年後の「俺」!!」
ああ、何かもうムカつく。暢気すぎるだろう?!5年後の俺ェェェ!!
「銀さんも銀さんが悪いわけじゃないんですから、落ち着いて下さい」
「そうアル。銀ちゃんは銀ちゃんなんだから、銀ちゃんの朝ごはんを銀ちゃんが食べてても仕方ないアル」
「何か、ややこしいなあ。おい。5年前の俺、テメー改名しろ!そうだな。銀突起なんてどうだ?」
「オイ。5年後の俺、人を突起物扱いすんな!!」
「ああ。全然、使ってねえもんなァ。テメーの銀突起」
「使ってますゥ!めっちゃ使ってますゥ!ひーひー言わせてますゥ」
「自分に見栄張ってどうすんだよ?」
哀れむような5年後の自分の目に、そうか、こいつは俺だったと思い出し、口を噤んだ。
一発、お願いしたいようなしたくないような女もいるにはいるけれど、ソイツとは微妙な関係で、今のところ何の進展もない。もっとも、俺もアイツも1ミリたりとも動いちゃいないから、進展なんぞなくて当然と言えば当然なのだが。その辺りの微妙極まりない現状もコイツはとうに通過済みときてやがる。まさか、5年後まで、現状維持って訳にはいかないだろう。

どんなことになってるにしろ、だ。
進むにしろ。
止まるにしろ。
去るにしろ。
消えて無くなるにしろ、だ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ