銀月短編3

□ザ・ヒーロー・ショウ!
1ページ/6ページ

侍戦隊ローニンジャーは毎日曜日、朝7時半から始まるちびっ子に大人気の戦隊ヒーローものである、らしい。
当然、んな時間に起きている訳がない俺が、何故そんな対極的な番組を知ったかと言うと、ひとえに仕事の所為である。
持ち込まれた仕事は急な怪我で出演できなくなったローニンイエローに代わってのヒーローショーへの出演だった。ド素人の俺に白羽の矢が立った理由はただ一つ。イケメンだとか、華麗なる剣の腕前なんじゃなくて、単なる体型の問題だった。ヒーローたちのボディスーツはかなりぴったりに作られていて、ちょっとでも体型に無理があると、腰を痛めたりするらしい。偶々、イエローのスーツアクターと俺が似たり寄ったりの体型だったとそう言うわけだ。これも偶々知り合いだった興行主が「銀さんなら、イケる」と推薦したってのが事の成り行きである。
いや、モチロン、拒んだよ。ガキの見世物なんてやってられっかって思ったし、でも神楽がニタリと笑って見せた米びつの中身は底が薄っすら見えかけていた訳で、俺はこれに負けた。
……ヒーローだって飯は食わなきゃならねえからな。

で、もうかれこれ一週間、このデパートの屋上で、ヒーローショーに出演中と相成った訳だが、それも今日で最終日。寺子屋が春休みに入った所為か、最終日マジックか舞台袖から覗いた観客席はいつにも増して盛況だった。
ド素人の俺にんな事できんのか?と思ってたけど、これが案外、なんとかなるもんで、スーツの視界の狭さと動きにくさにだけ慣れてしまえば、どうということはなかった。これまでにも亀の甲羅を背負ったり、エリザベスの着ぐるみで戦ったりとしてきた俺には何のことはない(少なくとも人型だ)。あ、言ってて少し悲しくなってきた。
要は動きと立ち位置を覚えること、後は出来る限り、アクションを大きく派手に見せることに気をつけていれば(でもマジでズブの素人には無理だからね。銀さんこれでも腕に覚えあるからね)、スピードは亀の如しでどーってことなかった。まあ、派手なアクションはレッドやブルーの担当だったってのもあるんだけど。
侍戦隊を名乗るからには、一応、刀を振るうって設定になっているが、これもお上に遠慮してか、スター○ォーズのパクリ的なライトセーバーになっていて、当たったところで痛くもかゆくもない。どうも柄から黄色の光が縦に伸びているところを見るたび、たくわんを思い出して仕方がないと新八に愚痴れば、せめてバナナって言ってくださいと呆れたように言われた。
イエローとくればカレーだろうと言えば、どこのアラフォーのおっさんですかと蔑むような顔で見てきたモンだから、ちびくろZのイエローだって、カレー食ってた!食いしんぼうキャラだった!(Z○説PVによる)とうっかり新八のお株を奪うような発言をかましてしまったことは、まあ、坂田Pとして昔取った杵柄だ。俺も大概、色々やってんね。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ