銀月短編3

□クローバー
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寄席の木戸で木戸銭を払っていたら、「あっ」と呟いて、月詠がその場にしゃがみこんだ。
「姐さん、どうかしましたかィ?」
しゃがみこんだ地面には雑草が生えているだけだ。
「四ツ葉のクローバーじゃ」
立ち上がった月詠の指に挟まれた四ツ葉のクローバーを見て、沖田は驚いた。
本当に外見と中身のギャップの激しい人だ。
「ほら、お守り代わりに持っていなんし」
せっかく見つけた四ツ葉のクローバーをこともなげに差し出されて、沖田は戸惑った。
「いや、俺は、その辺にわんさか生えている三ツ葉のクローバーの方が好きなんで」

――『幸せ』に一葉足りない三ツ葉の方が好きなんで。

「そうか。では、わっちもいらぬ」
えっ?と思った瞬間には月詠はポイとクローバーを投げ捨てた。
「あああー。もったいない」
「わっちも三ツ葉で結構。四枚目の葉は余所に預けてありんすよ」
そう言って珍しくも微笑んだ月詠に沖田は言葉を失った。
「……そうでしたねィ。一葉足りない訳じゃあなかった」

――『幸せ』の四枚目は『俺ら』だった。


「あれですか?そういうのが、姐さんの得意技で?」
「は?得意技?なんじゃそれは?」
「天然ってやつですかィ?こええなー」

「あれですよ?あんまり土方コノヤローに近寄っちゃいけませんぜィ?悪い病気が移るから」
「ぬしまで、銀時みたいなことを言うのか」

「そうだ。試しに、万事屋の旦那に真選組の水練大会に誘われたと言ってご覧なせえ」
「なんでじゃ?」
「きっと、泡食って、海に連れて行ってくれると思いますぜ?」
「はあ?」

end
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