2013夏企画

□side銀時____by縁
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ひのやの二階の窓辺にお月様がひっかかっているのを見て、銀時は眉を上げた。
うっかり沈むのを忘れた月が、真っ昼間から、窓辺でピカピカと光っている。
何、やってんだ、アイツ?窓辺で寝ちゃってるわけ?
「おーい、日輪サーン、お宅の娘さん、窓辺にひっかかって、眠りこけてるぜ?」
挨拶もそこそこに店先の日輪にそう告げれば、やれやれと日輪が苦笑を漏らした。
「朝まで働いてたんだよ。ちゃんと布団で寝ればいいのにねえ。銀さん、悪いけど、あの娘、起こして、ちゃんと寝るように言ってきておくれよ」
なんで俺がと言いかけて、そうか、日輪は車椅子だっけと思い直す。
まあ、死神太夫の寝顔なんて結構、レアであるからやぶさかではない。
酔いつぶれた寝顔なら何度かお目にかかったことはあったが、普段の寝顔なんざちょっとやそっとではお目にかかれない。
眉間に皺を寄せて難しい顔をして眠っているのだろうか。
若いうちから眉間に皺寄せてばかりじゃ、年食ってから、マジもんの皺になるぞと言ってやろう。
眉間の皺が渋いだなんて、そりゃ、オヤジだけの特権だと笑いながら、そっと襖を開けると、寝巻き代わりの白地に藍で桔梗を描いた浴衣に身を包んだ背中が見えた。
髪も下ろしているから、寝ようとしていたところではあったらしい。
窓辺で一服でもしていたかと思ったが、愛用の煙管は煙草盆の上に置かれていた。
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