銀月短編2

□李白にサヨナラ、ジョーにヨロシク
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銀時は、寒気にぶるりと身を震わせた。飲みすぎた頭を少し冷やそうと、外に出てきたのだが、やはり寒いのは寒い。汗ばんでいた肌が、一気に冷やされていくのを感じて、「戻るか」と呟いた。きびすを返そうとして、視界の端で光が揺れて、銀時は、水面にお月様が落っこちているのに気が付いた。手を伸ばせば、掬い取れそうな場所で光るその月に心を引かれて、銀時は舟縁からその月を覗き込んだ。
川の流れはゆるく、水鏡に映ったその月は天の月と同じように綺麗だった。

多分、銀時は自分で思っていたより酔っていたのだろう。

戯れに、水に映る月を捉えようと手を伸ばした。
影だったとしても。
捉えても指の間から零れていく唯の水だったとしても。

多分、銀時は自分で思っていたより酔っていたのだ。

思ったより水面は遠く、アレ?っと思った時にはバランスを崩し、あとは重力の法則に従って、派手な水音と水しぶきを上げて、二月の川に落っこちることとなったのである。
水音に気が付いた舟の船頭がすぐに櫂を差し出してくれなければ、溺れ死に、いや心臓麻痺であの世行きだったに違いない。

その後、見事、大風邪を引き、三日間に及ぶ高熱に苦しめられたことは、二月の川にダイブしたことを考えれば、当然と言えば、当然の結果だった――。
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